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「そうそう、新年会の時なんて相当酷かったよ。朝まで拘束、ひたすら説教されてさぁ…」
加わった保志沢の声に、あやのは初耳だと言わんばかりに懸命に否定する。
もしそれが事実であるならば、相手は社長と上司。
酔っていたとはいえ随分度胸のある人だ、と涼は感心した。
「え、ちょ、知らない知らない!そんな事してないって!!
私覚えてないっ……て、あれ、瀬名ちゃんは?」
「あぁ、トイレ行ってくるって」
「ふーん、大丈夫かなぁ」
―――案の定、あやのの予感は的中する。
お酒と共に歓談を楽しむ内にいつの間にか時間は過ぎていたが、気付けば二十分が経過していた。
未だ戻って来ない瀬名に、あやのは不安を感じて一人席を立った。
「私、ちょっと見てきます」
公園内はトイレの数がさほどない上に、女性用は非常に混雑する。
それに東屋からは少し離れているから迷っているのかもしれない。
最悪、突然気持ち悪くなってしまいどこかで倒れていたりでもしたら。
早歩きでトイレのある方向に100m程進むと、前方に瀬名の姿が小さく映った。
桜の樹の下、うんと若い男性二人組に囲まれ立ち止まっている。
その場から動けずに困っている瀬名の様子が窺える。
頭を下げ立ち去ろうとするも、腕を掴まれ引き止められてしまう。
あやのは慌てて瀬名のもとへ駆け寄った。
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