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一方、保志沢、星也、涼は、男性陣でちびちびと花見を進めていたものの、ちっとも戻って来る気配の無い二人に不安を感じていた。
「俺ちょっと見てくるわ」
今一歩盛り上がりに欠ける空気の中、静かに腰を上げたのは保志沢だ。
「ミイラ取りがミイラになってる気がする。星也は?」
「俺は残る。もしかしてすれ違いで小池や北川が帰って来るかもしれない」
「オッケ。じゃ、ひょっとしてすれ違いになっちゃったら携帯かけて」
そう言うと保志沢は東屋をあとにする。
「自分も行きます!」
一瞬迷った涼だったが、慌てて保志沢の後を追った。
桜並木を並んで歩く保志沢と涼。
日中暖かくなってきた春とは言え、やはり未だ夜の冷え込みを感じる。
涼はポケットに突っ込んでいた手を出すと、意を決したかの様に切り出した。
「……マスター、入社日に関して配慮して頂いて有難うございました」
二人の歩みが次第に緩まる。
「ん?いや、気にしないで。もう体調は落ち着いたの?」
「はい、おかげ様で。ご迷惑をお掛けしました」
「かなり仕事入れちゃったからね。研修すっ飛ばして実践あるのみ!」
丁寧に頭を下げた涼の肩に腕を回して、保志沢が冗談交じりの檄を飛ばす。
「はい、頑張りま………あ…っ!」
肩に回された腕の力が突然抜けたのと同時に、涼の視界に探していた人物が映った。
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