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あやのと涼の視線が瀬名に注がれる。
(私…っ!?)
誰も認めたくはないが、どうやら現況はその設定のようだ。
しかしいくら瀬名が年齢に対して幼い顔立ちであるとはいえ、二人の子と称するには酷く強引だ。
実際は瀬名とあやのの年齢差は六つ、保志沢とは十しか違わないというのに。
(えぇー…どこからツッコんだらいいの…)
あまりにも無理矢理な設定に、生まれたのは微妙な空気と沈黙。
「……ダセぇ」
「……帰るか」
あからさまな偽の設定に興醒めといったところか。
二人組は、妙な大人と関わっている暇は無いとばかりに見切りを付ける。
呆れた顔で早々と背を向け、瀬名達の元から立ち去っていった。
二人組の姿が見えなくなると同時に、保志沢はいつもの様におどけて切り出した。
「あは。ゴメンね~おかしな設定にしちゃって。
でも帰ってくれたし、めでたしめでたしって事で………あれ…?」
漂う気まずい雰囲気に今頃になって気付く。
「あ、やっぱりマズかった?」
「あの、助けて頂いて有難うございました。…でも、やっぱり…ハイ」
「……っ、マズイなんてもんじゃないわ、このバカ社長!!」
あやのが声を張り上げた。
確かに結果的にはあの方法で良かったのかもしれない。
お陰で無理に連れて行かれる事もなかったし、事件にもならずに済んだ、が。
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