序章

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俺は、歩いてきた。 どこから? 知らない。 どこへ? わからない。 ここがどこなのかすら分からない。 もうどれほど歩いてきたかも、わからない。 ただ、疲れた、という疲労感が湧かなかった。 確かに俺の足取りはおぼつかなかい。だが、何かに導かれるように、足が動いた。 …前に進まなければ。 そんな気持ちばかりが沸き上がってきた。 ふと、立ち止まった。 周りを見回した。一面に白い情景だった。霧、だろうか。 なんだろうか、このもやもやとした落ち着かない気持ちは。 感じた事のあるような、不快な靄のような静かな苛立ち。 分からない。分からない。 分からない。分からない。 …分からない? 分からない、という言葉に疑問を覚えた。 理由が分からない、というのは不快なものなのか。と思いながらも、分からないという感覚に疑問を覚えていた。 なんでこんな所にいるんだ? どこから来たんだ? …いや。待て待て待て。 重要な疑問はそれじゃない。 俺は誰だ? 分からない。 記憶喪失…? この単語が頭に浮かんだ事で知識が残っていた事に軽く安堵を覚えた。 ホッとしたのも束の間歩き出そうと立ち上がった瞬間、 俺の意識はブラックアウトした。
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