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「そういえば街はどうなりました?」
記憶が正しければ中々に被害を受けたように思えるが。
「半壊が百件、主に民家だが、貴族の館も被害を受けている」
思ったよりも被害でかいな……
「しかしだ」
そこでガルシアさんが俺の方を向く。それはとても真剣な顔つきで、思わず俺も畏まる。
「街の負傷者は何人だと思う?」
まさかのクエスチョン。半壊した家がそんなにあるってことは……
「百人くらいですか?」
俺の回答にガルシアさんはすぐに首を振った。
「ゼロだ」
「へっ?」
「兵は傷を負った者もいる。しかし街の民は死者はおろか、負傷者も皆無だ。まあつまりはだ、何が言いたいかというと」
少し躊躇いが見えたが、湯から右手を出し俺に向けてきた。
「お前の御蔭で、王も、王妃も、王子も、王女も、私も含め皆生きている。建物なんて建て直せばいいだけだ。この国の騎士団副団長として、また私個人として心より感謝を述べたい。有難う」
差し出された右手を握り返すが、初対面で斬りかかられ、妹さんには嫌われ、いい感じに悪い印象を与えてた人にこうも感謝されると気恥ずかしいものがある。
それを見抜いてかガルシアさんは初めて見る優しげな笑みを向けてきた。
「謙虚なのはいいことだ。だがお前は自分のなしたことを誇っていい、それだけのことをしたのだからな」
「…そうですかね」
「ああ」
そう力強く断言され言葉に詰まる。
「…………」
手を放し、顔に湯をぶっかけた。突然の俺の行動にガルシアさんは驚くことなく暖かな目をしていて
「……ふぅ」
慣れないねホント。
―――――――
ガルシアさんは長風呂派らしい。何でも街では今、大規模な復興作業中とのことで皆大忙しなんだと。
だがガルシアさんが疲れてる理由は王女様が勝手に復興作業を手伝い、至る所で勝手に要望を聞き、それを実行するために手伝わされていたかららしい。
内容は誤魔化され聞けなかったが、話してる時の表情からして無理難題を押し付けられたのだろう。
「俺も手伝った方がいいのかな……」
脱衣所から出てそんなことを考え歩いてる中「やぁぁぁー」と間の抜けた声が響く。
何事かと思い振り向こうとしたその次の瞬間、背中に強烈な衝撃が走り
「ごふぉぉぉぉっ!?」
俺は廊下を転がっていた。
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