フローヴァルのち馬車

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およそ20の氷を食べ終えたぐらいか、ノックの音と共に黒いマントと黒いフードを着た人が入ってきた。 その風貌は正に隠密。男女の区別が見ただけでわからない起伏の無い胸も正に隠密向き。 「ん、来たか」 俺が来室者を観察してるといつの間にか横にマスターが立っていた。 「二人とも揃ったな…おい、何時まで床に座っているのだ。さっさと立たんか」 「…………」 なんとなくマスターを無視し、そのまま話を進めさせようとしたら拳骨を一発もらい、俺は渋々と性別不明の真っ黒さんの隣に立った。 背は俺より少しばかり低いぐらいで…それ以外の情報が得られない。 ……一応挨拶はしとかないとな。 「えっと…俺は戸神です」 「……ミスト」 真っ黒さんは顔を見せたくないのか此方を見ないで小さく言った。 けど声質から確信した。この人は女性だ。どこぞの声が高い男性店長でない限り。 「自己紹介は終わったか?お前達は今回はパートナーとなるのだから最低限のコミュニケーションはとっておくことだな」 「イエッサー」 「…はい」 「うむ…では今から検問所前に用意してある馬車に乗って行ってもらうぞ」 「もうですか!?」 「時間に余裕を持って城に着いた方がいいからな」 「……はい、失礼します」 ミストさんはそう言うと部屋から出ていった。 「相変わらず行動が早いな。ほれ、貴様も早く行け」 マスターがしっしっと手を振り俺を邪魔者みたいに扱う。 なんか悔しいが女性を待たせる訳にもいかないし行くか。 「じゃあ俺も失礼します」 扉に手を掛けたところでマスターが声をかけてくる。 「ああ……それとな、この任務…嫌な予感がするのだ。くれぐれも気を抜くなよ」 マスターは真面目な顔で念を押し、無駄にフラグを立ててきた。 だが大丈夫、やるからには真剣に努めるのが俺のモットーだからな。 マスターの方に振り向き、グーサインをして部屋から出た。 そして出て数歩程歩いたところで俺の肩がポンポンと叩かれた。 「うおぉ!?」 直ぐ様振り向くとミストさんが立っているではありませんか。 そんな俺を見ながらミストさんは小さく喋る。 「……舐めてると…………死ぬよ」 それだけ言うと俺が驚き瞬きしてる間にミストさんの姿は消えていた。 「うわぁ……」 一人となった廊下で俺はフラグの連立に数分間、悶々とし続けた。
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