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何処か義故知がない気もするがエアリィさんが言うならそうなんだろう。
洗ったジョッキを棚に片付けているため顔は見えないが嘘を言う必要も無いわけだし。
「そうですか、すいませんでした。では行ってきます」
俺は軍隊よろしく敬礼し、席を立ち外に向かおうとした。
その時、何かが空を切る音が聴こえ、咄嗟に振り向きながらそれを掴む。
それは水色の布に白い魔方陣が描かれている小さな袋だった。
「私特性の御守りよ。君を一回は護ってくれるはずよ。頑張ってきなさい」
笑顔でエアリィさんが俺の真似をして敬礼している。
温もりの残った御守りが昔の記憶を蘇らせる。とても温かい懐かしい記憶を。
「……有り難うございます」
俺は御守りを首にかけ外へ出た。昼前の空は明るく、人で賑わっていてこっちまで陽気にさせられる。
そんな大通りを歩いていると数人の子供を連れたシスター服の少女がいた。
ギルド唯一のシスターでギルドランク6の魔法使い。
孤児院としても機能している教会で働く彼女の名前はアリシア。
最初の内、彼女はその世話好きな性格からか慣れるまでとクエストを手伝ってくれていた。優しい子だが子供の世話をしてるせいかお姉ちゃんぶる癖があるのが難点である。
碧の瞳が特徴的で、腰辺りまである金髪に、俺より少し低いぐらいの背は女性にしては長身だ。
まだ16歳の彼女だが、シスター服の下はナイスバディだとレイアさんが言っていた。
普段からシスター服で全容がわからないため何気に知られてない情報らしい。
あのグラマラスボディをもつレイアさんが言うのだから凄いのだろう。
ま、知ったからどうとかはないけど。
「ん?あれ…翔さんですよね?どうもこんにちは」
「え…ああ、こんちは」
気づいたら正面にアリシア達がいた。そして一緒にいたうちの5、6才ぐらいの女の子が尋ねてくる。
「お兄ちゃん誰?」
「えっと…」
「この人はね、お姉ちゃんと同じギルドの仲間よ」
当たり障りのない回答。けどそれを納得しない者がいた。
「ええ!?うっそだー、弱そうだぜこの兄ちゃん」
「弱そうだー」
「弱いんだー」
9才ぐらいの男の子と双子らしき兄妹が俺の心を抉っていく。
子供ってのは素直すぎるな。無邪気な発言が辛いぜ。
「そんなことないのよ。翔さんはマスターと同じくらい強いって噂なんだから」
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