フローヴァルのち馬車

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そういえばまだちらほら聞くなその噂。 それのせいで一部の人が俺と手合わせしたいと本気で申し出てくるから迷惑で仕方がない。 ただ不幸中の幸いで、マスターがふざけて言った冗談と思ってる人が大半だからまだ助かっている。 現に子供達も冗談だと笑っている。 ホントに面倒くさいのは一部の勘の鋭い人だけだからな。 「おおっー!!見つけたぞ戸神よ、今日という今日は勝負してもらうぞ!!」 「あ、あれは…」 突如として響く大声に大通りにいた人が一斉に声のした方をみた。どんなに遠くても聞こえるあの大声。 何てタイミングなんだ……一部が来ちゃったよ一部が…しつこいなホントに。 全速力で俺の所まで走ってこようとするアレに俺は全力で関わりたくない。 「ごめん、アリシアとチビッ子達。その話はまた今度で」 子供達は何で?という表情をしてるがアリシアはわかってくれたようだ。クエストの時何回か似たようなことがあったからな。 「はい、ではお暇なときに教会にも来てくださいね」 「…頑張るよ」 そして俺は子供達に手を振りながら裏道へと逃げる。けど奴はそう簡単には諦めない。 「ふははっ!!そう逃げなくてもいいだろ。本当は私と戦いたいんだろう?照れていないで私と勝負するのだ」 「都合のいい解釈すんな!!俺は今からクエストに行くんだから諦めてくれ」 「ならば私もそれに同行しよう」 「頼むからもうやめてくれ!!」 碁盤のような道を必死に逃げ回りながら天心へと向かう。 奴が天心まで追ってくることはない。店長さんが怖いらしいとのことだが俺にとっては大助かりだ。 そうこうしてる間に天心に着き、急いで扉を開けて駆け込んだ。 普通なら驚くところ、お客さんは慣れたようにお疲れと声を掛けてくれる。 頻繁に逃げ込む姿を見ていたからか反応は温かいもので俺も助かっている。 そして扉の外では奴が恨めしそうに俺を睨んでいる。 「残念だったな。早く帰りなさい」 その言葉で奴は一歩踏み出そうとし、そしてやはり足を引っ込める。 「むぅ…私は諦めないからな」 捨て台詞を吐き、去り際にもう一度こっちを期待の目で見たので笑顔で手を振ってあげると、あからさまにガックリしてトボトボと帰っていった。 まあ、どうせ明日には元気になってるんだろうけど。
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