フローヴァルのち馬車

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「ふふ、戸神は照れてばかりだな。本当は嬉しいんだろ。そうなんだろ?ん?」 うZEEEEEEE!! こいつの頭のなかで俺の言葉がどう変換されてるのかさっばり理解できん。 しかし…このモードのこいつは俺じゃ対処できない。 俺はジェスチャーでミストさんに助けを懇願してみた。 「…無理」 ミストさんは考えること無く小さく首を横に振った。 やっぱり関わりたくないんだろうなぁ。仕方ない、俺がどうにかするか。 「おい」 「私の名はおいではないぞ」 「…千夜さん」 「別に同い年なのだからさん付けは不要だ」 「……今からのクエストは7以上のものとなります。さて、貴女のランクはなんでしたか?」 「む?6だが…それがどうした?」 こいつは俺の話を聞いていたんだろうか? すると千夜が俺の盲点を指摘してきた。 「私のランクは6だがミストは8なのだから私と戸神で丁度二人だろ」 仕手やったりとした笑顔で俺を見てくる。 まさかこいつがギルドのルールを覚えているとは…少し予想外だ。 だがしかしだ、考えてみれば俺の勝ちではないか。 「ミストさん、こいつの同行を拒否してください」 「な!?」 そう、このルールは一番高ランクのメンバーの了解があってこそなのだ。 千夜はうって代わってあたふたし、ミストさんに同行を懇願し始めた。 「ざまあないな。さあミストさん、拒否しちゃってください」 「…私は…別に良い」 「ほらみろ!!ミストさんは別に良いと言っ…あれ?別に良いと仰有いましたか?」 「…うん」 そして千夜の表情が晴れやかなものとなり、対して俺は絶望に満ちていく。 「どうだ戸神、許可が出たぞ。これで私が連いてくことに問題はあるまい」 「いやいやいや、問題しかないから。何でOK出すんですか?」 連れてく真意をミストさんに訊いてみる。 するとミストさんは少し間をおいてから言う。 「…拒否してもどうせ意味がない。…それに戦闘能力はそれほど低くないから…足手まといにはならない…と思う」 「ハッハッハ、ミストは私と模擬戦をしたことがあるから実力を理解してくれてるのだな」 千夜がバシバシとミストさんの肩を叩き始めた。 気付けよ千夜、ミストさんが心底嫌そうなオーラ出し始めちゃってるぞ。 「…やっぱり…五月蝿い」 さっきより更に小さい呟きが俺だけに聞こえた。 それに俺は頷かざるをえなかった。
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