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外灯のない夜の街道は月の明かりがよく映える。
そんな淡い光を背に受けながら正座をしている千夜と俺。
「…だから…力というのは………なのだから……つまり…」
馬車は休むことなく夜道を進み、俺は眠ることなくもう…どれぐらいかな?まあかれこれ6時間ぐらいミストさんに説教されている。
力についての話でこんなに語ることが出来るとは。
溜まった授業をいっぺんに受けてるようでそろそろ俺も限界…
「…責任をもつ必要がある……だから…」
子守唄を必死に耐える俺と受け入れてる千夜。
「むにゃむにゃ…私の勝ちだぞ~、まて~戸神……」
「……人より強い力は……」
「んぁ、勝負…勝負だ~」
「……!!!!」
「むぎゅっ!?」
千夜は説教開始1時間で夢の中へと旅立っていた。
ミストさんも説教しながらよく奴の寝言を延々と耐えてたもんだよ。
「…うぅ…なんだこれは…重いぞ…戸神ぃ…助けてくれ」
「自分で退ければ良いだろ?」
「魔力強化してるのに持ち上がらないんだ…」
「デジま?」
千夜の背中には黒いビー玉位の球体が乗っているだけだ。
なのに魔力強化が通じない程重いとは…
「何ですかあれ?」
「…上級重力魔法…の応用版…そう簡単には退かない…はず」
俺の問いにミストさんが静かに答える。
「おも…い…反省…してる…から…解いて…くれ」
千夜があまりの圧迫感からか悶えながら助けを求め始めた。
林檎の様に顔を真っ赤にさせながら懇願する姿が何かエロい。
「もう良いんじゃないかな?反省してるようだし」
カメラがあればいいネタになったんだけどな…残念。
「…わかった」
ミストさんが手を球体に翳すとビー玉が消えていった。
千夜はビー玉が無くなると荒い息づかいをしながら荷台の壁に背を預けた。
彼女の乱れた着物と赤く染まった頬。その淫靡な姿はまるで事後のよ…げふんげふん。俺としたことが……いかんな。
「ふぅ…あの花畑を見たのは久しぶりだな」
どうやら思ったよりも極限状態だったらしい。
「…もう私は寝させてもらう」
ミストさんはそう言うと横になり寝始めた。
「そうだな、私も寝させてもらおう…か…」
千夜もダメージが大きかったらしい。壁に寄りかかったまま静かに寝息をたて始めた。
「……ふおぉぉぉ」
俺はその後、長すぎた正座による痺れに苦しみ続けた。
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