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「「くぅぅー……着いたー!!」」
「…五月蝿い」
俺達一行はお天道様が真上に昇りきる前にアイリス城下町入口へと辿り着いた。
この街は政治の中心地であり名だたる貴族が城の周りの高級住宅街に軒を連ねている。
そして国の中心地であるこの街の特筆すべき特徴は街全体が対魔法障壁で覆われているところ。国のトップが座する場所なのだから当然と言えば当然だろう。
ただ目に見えない社会格差が唯一の問題らしい。
これ全てミストさんの受け売り。
業者さんにお礼を言い、入口でマスターから貰った許可証を見せ障壁内へと足を踏み入れる。
入ってすぐの大通りは多くの人で溢れており、良い匂いがそこら中から漂ってくる。
「さーて、先ずは「…お城に行く」さいですか…」
そこらを観光でもしようかと思ったがそんな悠長にしてる時間は無いか。
そして俺の隣にいた筈の千夜は、ミストさんに羽交い締めで拘束され苦しそうに藻掻いている。
「く、苦しいぞ。は、離してくれ」
「…離すと後が面倒」
「あ、あそこの店に行こうとしただけじゃないか」
千夜が指差す先は多種の果実が店先に並ぶ果物屋。
日本でも見掛けた事のない果物もちらほら窺える。
ふむ…俺も行きたいなあの店。
「…規律はちゃんと守ってもらう」
「仕方ないさ、諦めろ」
「い、嫌だぞ。私はあの未知なる果物を食すのだ」
「…却下」
千夜は口まで塞がれ拘束されたままミストさんに引き摺られていく。
日頃の行いが悪いから多少の寄り道も許されないのだよ。
俺は千夜が指差した果物屋へと足音を消し向かった。
「いっらっしゃい、何にするんだい?」
物色し始め早々に、恰幅の良いおばちゃんに聞かれ目星の果物を選んでいく。
「それとあれと…ん?これは?」
脇目に入ったのは竹の篭の中で宝石のように蒼く輝く野球ボール程の球体。
ここ果物屋だよな?
「これかい?あんた、お目が高いね。これはかの有名な【マジックエンペラー】さ。知っているだろ?」
「え、えぇまあ…」
知らないね。
「これを知人から仕入れたは良いんだけど高値からか誰も買っていかないんだよ」
おばちゃんが篭に手を置き俺を横目でチラチラと見てくる。
露骨だ、買えって意味だな。良いだろう、俺も食べてみたいし。
「俺3つ買いますよ」
「ホントかい!?それじゃあ3つで銀貨1枚ね」
銀貨って……
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