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ホクホク顔のおばちゃんに見送られ、改めて袋内の買ったものを見てみる。
黄色の棘の付いた球体に星形、ドーナツ形、それとこの子供に買わせるような値段ではない野球ボール形の果物。全部で9つで占めて銀貨3枚と銅貨2枚。
うーん……かなりの出費になったな。
「…買い物は終了?」
「うおっ!?…ははっ、バレてたんすか」
どうやら袋を長く見すぎてたようだ。先を歩いてた二人にいつの間にか追い付いていた。
「…早く行くよ」
ミストさんはさっさと此所から立ち去りたいらしい。
黒フードが着物美人を拘束してる光景は道行く人達の興味をそそるようで、其処らから見られてる見られてる。
これはあまり気持ちの良いもんじゃないな。
「行きますか」
俺達は早足で大通りを抜け、貴族や大商人の住む高級住宅街に差し掛かかった。
とはいってもここの方が用はなく、辺りで談笑してる貴婦人には目もくれず城へと向かう。
「しかし境を越えただけでこうも貧富の差があるとは…」
俺が呟くと急にミストさんが千夜の拘束を解いた。
「ぷはっ、ごほっ…死ぬかと思った…急にどうしたのだ?」
「…少し……いや、何でもない」
ミストさんは何を思ったのかスタスタと1人先に行ってしまった。
「ミストはどうかしたのか?」
「んー……わからん。それより俺たちも早く行こう。置いてかれそうだ」
「そうだな……む?その袋は何なのだ?」
手から提げてる袋に千夜が気づく。意識が朦朧としてたからか聞いてなかったようだな。
「お前の行きたがってた店の果物だよ」
歩きつつ袋を全開に開け、中身を見せびらかす。これがやりたかったんだよね。
「なっ!?何で戸神だけ……ミストめ…贔屓じゃないか……。まあいい、それよりその真ん中に穴の開いてる果物を私に1つくれないか?」
「良いけど、銅貨1枚な」
「……後で自分で買いに行くとするか」
「そっか、そりゃあ残念だ」
食べたくなったのもあるが見せびらかすために皮を剥いてみるが、これがとても剥きやすい。
ものの数秒で持つ部分以外綺麗に剥き終わり、現れた紫色の実を一口齧るとグミのような歯応えがある食感で、噛めば噛むほど口中にジューシーな果汁が溢れてくる。
これはうめぇぇ!!
ふと千夜を見れば物欲しそうに見てきてるが断った手前欲しいと言えないようだ。
それを敢えてスルーし俺は果物を堪能しながら城へと向かった。
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