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「1つぐらいくれても良かったんじゃないか…」
「…右に同じ」
「ん?ああ、ンクッ……めんごめんご」
野球ボール以外を食べつくし、ミストさんに追いつき、城の目の前までやって来た異色のギルドトリオ。
城は幅広く深い堀で囲まれており、俺達は幅八メートル、長さ十数メーター程の頑丈そうな石造りの橋の前にいる。
「…そろそろ迎えが来るはず」
「じゃあその前に、これ2人にあげるよ」
俺が取り出したのは2つのマジックエンペラー(笑)。このために3つも買ったんだから。
「これは何なんだ?この輝き…初めて見たぞ」
「…知らない」
二人とも見たことないのか……名前は有名らしいんだが。しかし面白そうだから敢えて名前は明かさないでおこう。
「珍しい果物みたいだったから買ってみた。食べてみてくれ」
毒味として。
「…………」
おぉ、疑ってる疑ってる。ミストさんに関しては食べる気配が皆無だな。けどこれは想定内。本命はもう一人の方だからな。
「おぉ!!それじゃあ早速食べさせてもらうぞ」
「どうぞどうぞ」
仲間を疑ないが代名詞だな。ここまで信じてもらわれると少し罪悪感。
そして千夜が皮を剥かず口にゆっくりマジックエンペラー(笑)を運んでいき食べ……
「それもーらいっ」
れなかった。
「痛っ!?ひ、?!%$&#*ーー!!」
千夜が屈み込む。文字通り言葉にならない激痛に必死に耐えている。相当な勢いで舌を噛んでしまったらしい。
「痛そうだね~。それより久し振りだねミスト」
「…はい」
「ははっ、口数が少ないのは相変わらずだね~。で、君もギルドの人かな?」
「ま、まあ」
何処からともなく颯爽と現れ、千夜からマジックエンペラー(笑)を奪った少女。
金の瞳に淡いセミロングの桃色の髪、頭にはプラチナに様々な宝石をあしらったティアラを身に付けている。
ただ服装が無地の白Tシャツに短パン。何ともアンバランスな身形だ。
一体何者なんだ?
「それじゃあ宜しくだね。私の…いえ、私達の護衛をしてくれるんだから」
「へ?」
護衛ってことは…
「…そう、この方が護衛対象のアイリス王女様」
「固いな~ミストは。もっとフレンドリーにいこうよ」
ケラケラと笑うその姿からは王女として振る舞う気が一切感じられない。
これが王女様なのか……
幼い顔立ちだし背もあまり高くない。歳は下なのか?いや、けど胸の方は…………うーん、年上かもしれん。
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