馬車のち城

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王女様がミストさんと話し…いや、一方的に喋りかけ続けていると、橋の向こうから甲冑を着た短い金髪の爽やか美男子が走ってきた。 「はあっ、はあっ……ふぅ。見つけたぞ、一体何をしているんだ」 かなり捜していたのだろうか、息切れ切れに男性が王女様を叱るが全く堪えていない。 「兄上オーッス」 「その言葉遣い、いい加減に直したらどうだ」 「でっきませーん」 「……もういい、それよりギルドの人達」 埒が明かないと息を吐き、男性が俺たちの方に向き直り少し身嗜みを整え咳払いを1つ。背…俺より高いな。 「妹がすみませんでした。兄として謝ります」 そう言いながら王女の兄と名乗る男性が頭を下げてくる。 「…気にしなくていい」 「そう言ってもらえると助かります。では中へ行きましょう」 男性は王女を一発小突き、痛がる妹を無視しながら俺達を先導する。 兄と云うことは王子様ってことだろうけど随分と物腰が柔らかい人だな。それに格好が銀の甲冑…まるで一端の騎士みたいだ。 「あ…ちょっと待ってください。1人忘れてました」 そして俺は未だに丸くなってる残念美人の元へ駆け寄り肩に手を置く。 「ほれ、行くぞ」 「うぅ、心配してくれてもいいんじゃないか?」 「……千夜、大丈夫か?頑張れるか?立てるか?……うしっ、行くぞ」 「なんか違う…」 言われた通り心配したのに何が不満なんだか、全く贅沢な。 「千夜……だって?」 ふざけていると王子様がこちらに振り向き驚愕の表情を浮かべている。 「うん?クラウドか?久しぶりだな」 千夜が顔を上げ片手を挙げつつ簡易的な挨拶をしただけで王子様の顔が真っ赤に染まっていく。 ほぉほぉ、分かりやすい分かりやすい。 「ん、あ…あぁ久しぶり。一年振り……かな」 「そうだな。それにしても……」 二人が話し始めたので王女様とミストさんの方へと向かう。 「どうしましょうあの二人?」 「あのままにしておこうか。兄上もその方が嬉しいでしょ」 王女様は目を細めながら二人を見つめる。兄思いな妹だな。 「さて、それじゃあデレデレな兄上に替わって私が案内するよ」 クルっと一回転しはにかみながら王女様が城を差し言う。 「けど外にあのままは危ないんじゃ…」 俺の疑問に王女様はちっちと指をふり天を指差す。 「暗殺は夜だと相場が決まってるよ。だから大丈夫」 安易すぎる。
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