馬車のち城

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正直断りたいけどそれは無理な状況だ。俺は今はただの覗き野郎でしかないんだから。 「どうする?」 「……ドンと来いです」 「ふふっ、そうこなくっちゃ。フーちゃんお願い」 王女様が奥の部屋に呼びかける。 フーって名前か。うちの暴食妖精と同じ愛称じゃないか。今どこにいるんだかな。 「あ、食事の途中だった?」 奥から林檎を抱えやって来たのは俺のよく知る親しい友人。けど俺にはまだ気づいていない。 「ん、だいじょーぶ。それでどうしたの?」 「あの人に最高の体当りをかましちゃって」 「敵ってことだね。分かっ…………あれ?」 意気揚々とこちらを向き、そこで目と目が合った瞬間、見つめあう俺とフーちゃん。 「よぉ」 「……何でいるの?」 俺の方が聞きたいくらいだよ。 「え?何?知り合いなの」 予想外の事態に王女様が尋ねてきたので俺とフーは顔を見合わせ、そして王女様に向き直り二人同時に言う。 「「親友」」 綺麗にハモった俺達。 フーが違う答えじゃなくて自分で言っといてホッとしたよ。 「……へぇ。けどそれじゃあ攻撃なんて出来ないね。せっかく実力を測れると思ったんだけど……まあ仕方ないかな」 少し驚きの表情になるも、直ぐに平然とした顔に戻りそう言うと王女様は近くのテーブルのイスに座る。 フーに強要をしないところをみると彼女がフーを利用するつもりではないことが分かる。 出会ったのは多分フーが出掛けた後だろうから会って2日ちょいか。理解がある人で良かった。 「と言うか何で此処をチョイスしたんだ?」 「う~ん、偶然お城を見つけたからこの部屋の窓が開いていたから入ってみたの」 「それは不法侵入と呼ばれる。罰金としてその林檎をくれ」 「それでね」 スルーしやがった。慣れてるから良いけどさ。しかしまあこんな距離を旅して偶然お城に辿り着くもんかね。 そしてフーが続きを話そうとするとそれに王女様が待ったをかけた。 「その話し、長くなるかな?」 「あぁ、すいません。フー、俺の部屋で話そう」 「えっと、違うよ。長話になるならこっちで座って話せばって言おうとしたの」 出ていこうとした俺達は王女様に手招きされ、断るわけにもいかないので対面のイスに座る。 「さて、悪いけど先に二人がどういう経緯で知り合ったのか教えてくれないかな?聖人でない妖精の親友さんなんて凄く興味があるの」
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