馬車のち城

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あり?俺、聖人じゃないって言ってないよな。確かに違うけど。 「不思議そうな顔してるね。なんてことないよ、フーちゃんから聞いただけだから」 何処からか取り出したクッキーを高級そうなお皿に広げ、それをつまみながら言う王女様。 まあ納得だな。家の妖精が随分と口が軽いのは分かってる。 「翔、言っちゃ駄目だった?」 「ん……大丈夫だ、問題ない」 心配そうに聞いてきたのでそう宥めておく。実際何も支障はないわけだし。 「で、話してくれないかな?」 「それは良いんですが……面白い話でもないですよ」 「良いから良いから、話してよ」 聖人云々とはそんなに興味を抱かせるものなのか。これからは注意した方が良さそうだな。ギルドであんなんだったから感覚が狂ってんのかな。 けど今回は仕方ない。目を輝かせている王女様を無下に扱うなんて断罪ものだからな。 「えっとですね、フーと出逢ったのは…………」 「王女様、騎士団副長のガルシアです」 「う~ん、入って良いよ」 「失礼します。国王様と王妃様が……なっ、貴様、ギルドの。何故此処にいる!!」 入室と同時に臨戦態勢に入り俺を睨み付けてきたのは先程の謁見時にいた騎士の1人。 「……良いこと思いついちゃった。ガルシア、この人、私を覗きに来たんだって」 「え?」 いや、あの、見ましたけど。 「き……貴様ぁぁぁー!!」 副団長が鬼のような形相へと変化し瞬時に抜刀し、俺を殺さんと迫る。その目にも止まらぬ一閃を床に転げ避けると、既に振り下ろされ始めた二戟目。 眼前まで迫った刃を片膝を着きながらギリギリで白羽取りし、硬直状態へと持っていく。 「ぬぐぐ……王女様、一歩間違えば俺真っ二つでしたよ」 「作戦Bだよ。その身の熟し……うん、流石だね、合格」 解せぬ。 「……どういうことです?」 俺達の会話を聞き、副団長の力が弱まっていく。 「ランクが2。あのギルドからの人でもそんな不安因子は早目に確認したかったの。そして貴方の剣を初見で避けた。充分合格だよね」 「……確かにそうですね。ギルドの者、いきなり切りかかりすまなかった」 事を理解したのか、剣を収め手を差し伸べてきた。 そしてその手を掴もうとしたその時、王女様が独り言のように呟く。 「あ、けど覗かれたのは事実だねぇ」 「!!……天誅!!」 「あひゃいっ!?」 死ぬ、死ぬ。
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