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「ん…………ふぅ」
何時間ぐらい寝ていたんだろうか。窓の外を見れば日が沈みかけている。
あの部屋で副団長の凶刃を無抵抗で避け続け、王女様が満足したのか飽きたのか副団長を止める。そのたった十分ほどの時間が神経を極限まで磨り減らしたこと……
無傷ですんで良かった。
しかし俺とフーとの出会い話や副団長の剣を避け続けたことで王女様に認められたのは幸いだった。
まあ副団長には別の意味で危険人物に認定されたようだけど。
そして王女様の用事で皆が部屋を出て別れた後、俺はフーと自室に戻りいつの間にか寝ていたってとこか。
「そういやー、フー、どこにいる?」
「ここだよ。あむっ」
声がテーブルから聞こえ見ればフーはいたが……また果物食ってやがる。
『起きられたようですね。ご夕食の時間になりましたのでお迎えに上がりました』
フーの食欲に溜め息をついていると部屋の外から俺を案内してくれたメイドさんの声が聞こえてきた。
何故起きたとわかったし。
「……いや、気にしたら負けかな……今行きます」
「……広い食堂ですね」
「はい、兵士や騎士の皆さんはここで食事をとりますから」
「えっとこれはバイキング方式で?」
「その通りで御座います。では私は仕事が御座いますのでこれで失礼します」
「いえ、ありが……もういない…だと?」
振り向けば神隠し宜しく消えたメイドさんに畏怖の念を抱きつつ食堂を見渡す。
フーを連れて来なかったのは正解だったな。ここは人で溢れかえりすぎてる。しかも殆ど男だからむさ苦しい。
「さて、どこに座ろうか」
適当に好きなものを皿にのせ歩いていると六人掛けのテーブルに二人だけしかいない席を発見した。
そして俺はその二人の対面の席に腰を下ろす。
「おぉ、遅かったな。早く食べよう」
そう言ってきた千夜の皿には手をつけてない山積みの料理があった。そしてミストさんも食べた様子がない。
「待っててくれたのか?」
「いや、私は食べようとしたんだが……ミストがな」
千夜は恥ずかしそうに苦笑いしながら横目でミストさんをみている。
「…仲間だから」
そしてミストさんは顔を少しあげ呟くように言った。
そして全俺が泣いた。
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