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――――――
両親の死を乗り越え数年の月日が過ぎ去り、ギルドには入ることなく叔父に鍛えてもらい両親譲りの才能に磨きをかけ、独自で困っている街の人を無償で助けていた。
それが日常となったある日。
「行ってきまーす」
「ああ、気を付けろよ」
何時もの如く人助け。だが今回は街の郊外で神隠しのように消えた少年の調査であった。
一向に発見されない少年に、ギルドでも対策が練られ始めていたとき、ミーシャは日に日に窶れていくその子の母親を見ていられず単独で調査に乗り出したのだ。
「ここら辺だよね……」
フローヴァルから少し離れた広大な更地に少しばかりの木々があるだけの郊外は見渡しが良く、人がいれば直ぐにでも見つけられる殺風景な場所である。
観光地であるマルクからの道とはうって変わっての荒れようは魔物の出現の頻度が物語っている。
古くの争いによる怨み辛みが土地に蓄積したためとも、魔物が好む何かがあるとも云われているが、耕しても穀物が実らぬ不毛の地としての認識だけが人々の中にある。
そんな場所であるため子供はおろか大人でもあまり近寄ることはない。
だが危険とされるものは常々、精神的に幼い少年少女に興味を抱かせるものである。度胸試し、興味本意、そんな理由から自ら足を踏み入れていく。
今回の事件も正にそれであり、数名の少年少女がこの場所を訪れた。
そして少しの散策のあと、何も恐れることはないことに興奮が冷め、一人の少年が帰ろうと両手を空に振り上げた瞬間、彼は文字通り目の前から消えてしまった。
残された友人たちは突如として消えた少年を捜したが、見つかることは無かった。それがこの事件の詳細である。
「考えられるのは……」
事件の一連の流れを思い返し、ミーシャは地面に手を置き魔力を流し始める。
黄色に輝き波状に拡がる探索魔法。無論、既にギルドの者も探索魔法は使っていたがミーシャは上位ランクにも劣らない魔力操作の持ち主であった。
だからこそ彼女は発見できた。地に潜む異形の者を。
「っ!!」
感じ取ったのは恐怖。ドロドロと纏わり付いてくるようなどす黒い感覚。
(あ……足が、う、動かない。ふ、震えが止まらない……)
知ってしまえば後には戻れない。
探索魔法により自らの居場所が気付かれたと知り、敵は動き始めていた。
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