馬車のち城

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少女はミーシャに説明を始める。 「…今からこの身体を貴女の身体に融合させる」 「っ!!それは……」 「…心配しなくていい。…記憶も見た目も変わることはない」 「でも…それでは貴女が……」 この期に及んで他者の心配とはお人好しの次元を越えている、そう思いながらも笑みが零れずにはいられなかった。 「…元々私たちには身体は存在しない。…これは此方に来るときの仮の身体。…だから気にする必要はない」 「…………」 「…けれど聞かなければならないこともある」 「…………」 「………っ!?」 先から言葉を発しないミーシャに疑問を感じ、調べると脈が極端に弱まっていた。 説明しきれていない事が幾つかあった。後々ミーシャが苦労するかもしれないと思ったが時間もなかった。 「…私の勝手か……。…私はあの人に近づきたいだけなのか……」 そう静かに呟きながら少女は空を仰ぐ。そして二人の少女は光に包まれていった。 数十分後、フローヴァルから遠く離れた山でミーシャを叔父が発見し保護した。意識が弱まっていたものの身形に異常は無かったが、片目の瞳の色が反転していた。 フローヴァルに戻る頃には彼女の瞳は常人のそれと変わりないものに戻っていたが、その後一週間も寝たきりになり叔父は自分を責め続けた。 ―――――― そこで映画のように鮮明だった映像が終わった。 「…仮の身体といっても神様が創ったもの。…そしてそれは代わりは決して与えられない。…だからこの世界で物理的干渉を必要としたときは彼女に入るしか………すまない、聞ける状態ではないか」 「えぇ……ちょっと」 重いって、マジ重いって。 こんなのを見せてミーシャが何をしたいのか分からない。誰にも知られたくないような事だろうに。 会って短い付き合いだが、歴とした友達となってる人が悲惨な目に遭ってる映像を見せられて何も感じない訳がない。 「…大丈夫か?」 ミーシャの姿でリンさんが訊ねてくる。……何とも言えない気分だ。 悪い意味で。
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