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「…思うことがあるかもしれない。…けれど君にも伝えねばならない話がある。…聞いてほしい」
リンさんが真っ直ぐに見据えてくる。その真剣な表情に俺はただただ頷いた。
「…まず、あと一時間後に魔族とその手下の襲撃が起こる。…そして王族の誰かが死ぬ」
は?
「なんですかそれ!?早く知らせないと!!」
俺は微塵も疑うことなく、急いで皆に知らせに行こうとしたがリンさんに阻まれる。
「…それはできない」
「何故!?」
「…襲撃が起こることを伝えるだけは許しをもらった。…しかしそれを未然に防ぐような行動をさせることは禁じられてる。…勿論、襲撃が起きる前に誰かの護衛に行くことも」
じゃあなんだ、みすみす誰かが死ぬのを黙って見ていなきゃいけないのかよ……
「…ただ後者は別。…君が変えることを許されている」
「それって……」
「…君次第ということだよ」
「俺次第……」
……やらなきゃならないことはわかる。俺は襲撃が起こったら直ぐに王族の人達をかき集めて死ぬ気で守り抜けばいい。
多分だが無理じゃない。
けど助けられなければそれは全て俺の責任。俺のせいで誰かが死んでしまうのと同じ。
ついさっき会った人が自分のせいで死んだら俺はどう感じるのだろう?
…………わからんな。
「…これから君は様々なことを知る。…ただ、どうかあの人を悪く思わないでほしい」
「はい?……なんのことですか?」
「…私はここまでだ。…後は彼女が引き継ぐ。…君なら出来る、頑張れ」
「え、ちょ、とおっ!!」
リンさんは微笑みながらそう言う。すると急に糸が切れたようにミーシャの身体が椅子から横に落ちていく。
スロー再生みたいに床へと向かうミーシャを倒れこみながら何とかキャッチ。
「セーフ……ん?」
手に柔らかな感触。そしてお胸もキャッチしていた。
……じ、自分に聞きたい。どういう軌道で手を動かしたんだ?こ、これ程の偶然、そ、そ、そうないだろう。し、仕方ないよな不可抗ry……
「…………」
「…………」
目と目が合う瞬間、始まったのは一方的なグーとパー、ときどきチョキの猛攻だった。
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