馬車のち城

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目潰しは防がせてもらったが後は潔く喰らい、土下座なう。過去のあれのあとに俺の今さっき仕出かした所業は外道のそれだ。わざとならの話だが。 「ねぇ……ホントに偶然?」 仁王立ちしながら土下座してる人を見下すその姿。 「sでしたか……」 「…………」 無言でミーシャが俺の首を片手で絞め持ち上げる。 「ちょっ、く、苦しい、いや、ホントに偶然…ホントに……」 すると俺の必死の弁解が届いたのか手が離され床に尻から落ちた。見上げれば未だに俺を睨むミーシャ。 「何か言うことは?」 とても怒っていらっしゃる。いかんな、この空気は変えねばならん。 「あれだよ……まだこれから成長するっ…ぶっ!?」 初めてのキスは床でした。食塩と鉄分の味がしました。 「翔のせいで調子狂っちゃったよ」 「俺はミーシャのせいで前歯の位置が一ミリほど狂っちゃったよ」 俺は無機物とのファーストキスを終え、椅子に座りミーシャと向かい合っている。 ミーシャの瞳の色は元に戻っており、胸タッチの件も誤解だとわかってもらえたとこ、というよりちんたらしてる時間がないから保留にされた。 多分一番怒ってる理由は胸が小さいと遠回しに言ったことだろう。貧乳はステータスと言ってもいいがまたぶたれそうだし止めておこう。 「真剣な話をするはずだったのになぁ」 紅茶を啜りながらチラッと俺の方を見て、皮肉たっぷりに小さくため息をついてきた。 「ぐっ……まあまあ、時間も無いわけだし」 「…あと40分だね。けど…大丈夫?」 「まあね、けど何とかす「違う」…何が?」 「翔自身が…責任に押し潰されたりしてない?」 ミーシャがどこか不安そうに俺を気遣ってくれている。 ああ…ホントなら俺が気のきいた事でも言って励ましの一つでもしなきゃいけないのに……駄目だな。 「翔の経緯はリンから聞いてるんだ……だから翔がどういう存在なのかも知ってるよ」 「それは初耳だ」 リンさんから聞いてないぞ。というか言っちゃって良いもんなのか? 「いつ頃聞いたんだ?」 「この仕事の少し前ぐらいかな」 もしや出会う前から知っていてそれで俺を助けたのかと思ったがそうじゃないのか。 少し安堵。
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