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「ビックリしたよ。リンから情報をもらっていたときなに食わぬ顔で『物置部屋に私達とは違うけど神の使いがいる』なんて言うから」
違う、あそこはもう俺のマイルームだ。居候だし図々しいから言わんけど。
「それで翔がそれだって聞かされて凄くビックリしたよ。それで気になって色々質問したら全部答えてくれた感じかな」
「は~、じゃあ俺が一回死んでるってことも知ってるんだ」
「え?」
あれ?なんでそんなキョトンとした顔になってるの?聞いてるんでしょ?
「翔……死んだの?」
恐る恐る訊いてくるミーシャをみて理解出来た、この子聞いてないんだ。しくった、要らんこと蒸し返すハメになる。
「あたし……翔は争いの絶えない世界を憂い、悩み、嘆きながらも毎日天に向かって祈りを捧げていた少年で、それを見ていた神様が『君には才能がある。此方に来ないか』ってスカウトされた異例の存在で、肉体を保ちながら天地を往き来できる特殊な使いって聞いてたの……」
「待て」
俺はいつから世界を憂い悩む少年の設定になってるんだ?
「リンが凄く真剣な表情でいってたからホントなんだって信じてたよ……」
リンさんか……俺のためを思って嘘をついてくれたんだろうな。有り難いっちゃ有り難いんだが……なんかなぁ。
こっちの世界にはそんな人がいそうだけど俺自身、そういう人だと見られるのは辛い。中二病なるものを連呼する日本で生きていたからだろうな。
「翔本人が言ってるんだからそうなんだよね……うん、ごめんね」
「まあ…別にいいんだけど」
ミーシャは申し訳なさそうにテンションが低い証拠に猫耳を垂れさせながら謝ってきた。
これは可愛い。
じゃなくて、死んだと言ってる奴が目の前に居るってのは矛盾してるからな。いまいち実感もわかないだろう。
「…………ポリッ」
「…………ズズッ」
そして会話が止まる。
分かってる、順番があるなら次は俺の番だ。
紅茶のカップを置くと静かな部屋にカチャリと音が響く。
「ミーシャはさ…なんで俺に見せたの?」
紅茶のカップにできた波紋から目を離し、意を決して訊いてみた。
「ん?……そうだねぇ」
顎に手を当て、考える素振りを見せながらミーシャは数秒ほど考えたのち言う。
「分からない…かな」
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