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今度こそと扉を開け廊下に出ると、既にお待ち迎えてくれてるお犬様。左右に4匹ずつ、ご丁寧に二列応対で並びこれでもかとぐらい睨んでいる。
「翔は右をお願い」
隣からそう聞こえた次にはミーシャが犬どもを蹴散らしていた。
骨が砕ける嫌な音が広い廊下に響く。容赦がない、というか殺すことに迷いがない。対して俺は眼前の犬が気持ち悪いが蹴る気になれない。
「翔、何してるの!?」
ミーシャの声にはっとして前を見ると前列の二匹が壁に飛び左右から、後列の二匹は床を蹴り4匹一気に襲いかかってきた。
図体のでかさに避けきれないと思い、俺は咄嗟に剣を呼び出した。
「うらぁっ!!」
楕円状に力任せにフルスイングして犬たちを壁へと叩きつけると、死にはせず気絶したのかピクピクと痙攣していた。
「翔は甘いね……」
そう呟きミーシャはこっちだよと言いながら走っていく。表情は見れないが怒っているようだった。
迷うことなく一番近い王女の部屋へと向かう彼女を少し後ろで追いかける。その途中に道を塞ぐ犬を何匹も的確に、且つ無駄のない軽やかな動きで蹴り殺していくミーシャに俺は畏怖の念を覚えていた。
黒い魔力を纏うその脚は、左手に持つ友達がいない仙人が宿るという木刀は必要ないんじゃないかとさえ思えるほど強力だった。
そしてミーシャが難なく王女の部屋へと辿り着き、何もしてない俺も扉の前に立つ。
「行くよ」
ミーシャの合図に無言の了解をし、勢いよく扉を開けるとともに黒いなにかが飛んできて俺を壁へと叩きつける。
「ぐっ……あ?」
目を開けると息絶えたあの犬が俺に乗っており、それを退かし王女の部屋へと入るとミーシャが立ち止まっており、釣られて部屋を見れば犬が辺りに転がっていた。
その数およそ十ほど。そして肝心の王女様は心配そうな表情で椅子に座りながら結界らしきものを自身に張っている。
その手前では最後の一匹らしい犬が丸い発光体と対峙していた。
「あれは……」
俺が発光体の正体に気づいた瞬間、犬が飛びかかり、それを下に避けた発光体が抉るように犬を天井へと打ち上げた。
役目が終わった発光体はゆらゆら揺れ、クルッと一回転し光を解き声をあげた。
「やーおわった~…はれ~?かけるだ~。やっほ~」
顔を赤くし手を振ってきたのはやはりフーだった。
そしてあいつは確実に酔っている。
何してたんだおい。
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