馬車のち城

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顔を赤くしてゆらゆら頭を揺らしながら嬉しそうに笑っているのはやはり千夜だった。 「こら、何故酔ってる?」 「おぉミストじゃないかぁ。勝負だ~」 聞いちゃいねぇ。 「はぁ……ん?」 ポトリと着物の帯から転がり落ちる物体。青く輝く皮に、かじった跡らしきから窺える中身も青いこれは……変だな、千夜は持っていないはずだ。 「これを何処で?」 「戸神のを貰ったぁ、へへ~」 そういえばいつの間にかなくなってたな。奪ってまで食いたいとか、余程王女様に盗られたのが悔しかったのか。 ま、俺は二人のついでに買っただけだから諦めつくから良いけどな。 「これはやっぱり……」 ミーシャが拾い上げまじまじと観察している。 「知ってるのか?」 「これはね、口にした者の魔力を増大させる代わりに副作用として泥酔させるものなの」 何と!?マジックエンペラー(笑)にそんな力が秘められていたとは、銀貨は伊達じゃないな。少し後悔。 「翔から貰ったときには気付けなかったよ……高かったよね?」 「1つ銀貨一枚だった」 「……普通買わないよ」 顔が見えないから分からんが呆れてるんだろうな。しかし買ったものは仕方ない。 「それは置いといてだ、千夜はどうする?」 「酔ってても戦えるみたいだから連れてこう」 千夜が来た方に指を向けながらミーシャは言う。 左を見れば成る程、犬が壁にズラリと首まで埋められた状態で一列に並んでいた。これはエグい。 「じゃあ俺が背負うよ」 「うん、お願いするね」 何だ、簡単に了解してくれたな。セクハラとか言われるかと思ってたけど…まあいいや、役得だ。 「おいしょっと」 思ったより重いな、胸のせいか? 「何ニヤニヤしてるの」 「い、いや、別に。先を急ごう」 いかん、どうにも顔に出てしまう。しかし大きいな……けしからん。 「しつこいっ!!」 廊下を走っているとうんざりしたような女性の叫び声が聞こえてきた。 何やら切羽詰まってるようだが俺も厳しい事態になってる。 「やー、うりゃあ、らぁ、私の勝ちだ~」 「もう、ぐふっ…勝ちでいいから、ぐっ、黙れ痛い……もうやだ」 千夜を背負って数分、カップ麺が出来上がる時間で肩や腹を何発殴られたか。 背負うと言った手前ミーシャに任せるわけにもいけなかったけど、もうこの子置いてきたい。
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