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馬鹿みたいにポカポカ殴られるなか、横でフードからくぐもった笑い声が洩れてくる。
「…ミーシャ、分かってい…いてぇ、たろ」
「一応ね、ギルドで酔って何回か暴れてるのを見てるから」
「通りで許したわけだ」
「クスッ、役得とか思ってたんじゃないの?」
ノーコメントで。
そのまま殴られながらも声のした方へ向かうが、犬に全く遭遇しないことに疑問を持ちながらも廊下を抜け開けた空間に出た。
「これは……」
上から見た光景に理由はすぐに分かった。何てことはない、弱味を持つ敵の下に集結していたのだ。
隅の結界らしきものの中には逃げ遅れたのか幼い子供やメイドさんが数人いて、それを護るように皆が戦っていた。
倒れている兵士には目もくれず、奥の壁際に追い詰められている数人の騎士にひっきりなしに飛び掛かっている。
そんな中、見覚えのある少女が一歩前で味方を鼓舞しながら一匹、また一匹と犬を斬り裂いていく。
ブラコンのプリシスさんだった。
その姿は兄様兄様と兄至上の妹の姿ではなく勇ましい一人の騎士であり。
「助けなきゃ」
下に飛び降りようと手摺に足を掛けるが背後から肩を掴まれる。
「気持ちは分かるけどそんな時間はないよ」
「けど、このままじゃ!!」
下の通路からわらわらと出てくるあの量と勢い、あのままじゃじり貧だ。
だがミーシャは俺の背中に居るものをポンポンと叩きながら言う。
「ふぅ、翔は何のためにそれを背負ってるのかな?」
……嗚呼、そうですね。
そうと決まれば―――
「行くぞ酔っ払い。行ってこぉい!!」
腰の辺りを両手で持ち敵の密集してる所目掛けて殴られた恨みとともにぶん投げる。
急な大声と人が投げられた光景に敵味方関係なくこちらに注目した。
加減無しの人間大砲は敵の真っ只中の一匹に着弾し、起き上がると思いきやそのままバタリと倒れてしまった。
「「あっ」」
驚きからか千夜から一歩後退りしていた犬どもがここぞとばかりに飛びかかっていく。
これはヤバいぞおい。
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