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数匹の犬どもが次々と千夜にのしかかり姿が見えなくなっていく。
声は通らずとも結界の中のメイドさんや子供が悲鳴をあげているのが目に見えて分かる。
「え……マジで?」
気づけば声が出ていた。予想外だった。あいつなら大丈夫だと安易に考えていた。
騎士の人達も敵の密集地に無闇に突入出来ないようで動かない。
これは洒落にならんと思い慌てて下に飛び降りようとするも、再びミーシャに止められる。
「ミーシャ、これは流石にヤバいってこれはもう助けないとああどうしてこうなった俺の馬鹿やろう」
思わず心の声を溢してしまう俺にミーシャは肩を二、三度軽く叩きながら言う。
「心配ないって。一瞬あたしも焦ったけどね……まあ見てれば分かるから」
言ってることを理解できないでいると巨大な破裂音に思わず反射的に目を閉じる。
何事かと下を見れば千夜にのし掛かっていた一匹が空中に飛んでいた。
それだけならまだ良かったのだがそれは腹が破裂しており、中からは見るのも悍しいほど内臓が飛び出ていた。
有り得ぬ程にグロテスク
「……うぇ」
これは目を背けても仕方ない。
その間にも断続的に風船がはぜるような音が鳴っていく。
そして一分程で鳴り止む破裂音。
それと入れ換えに響く女性の怒鳴り声。
「女性を敵に投げ込むなんて貴方は馬鹿ですか!?」
振り向き下を見れば恐ろしい剣幕のプリシスさん。
だがそれを気にすることなくミーシャは言う。
「ほら、あの魔武器があればこの場は切り抜けられるから」
そして走り出しながら手をクイッと曲げて合図を出す。
千夜を見ればのし掛かっていた犬は最早残骸となり周りには距離を取った犬たち。畏怖した様子の敵を腰を屈め、両手に逆手持ちで短刀を構えながら愉しそうに眺めている。
あれが千夜の魔武器か。よく見ると緑の何かが刀身の周りを渦巻いている。
詳細は分からんがあれが破裂の原因か、あぁ恐ろしい。
具体的な仕組みを知りたい所だがそんな時間はない。
「すいませんホント、そして千夜を頼みます」
プリシスさんに軽く頭を下げミーシャを追う。
廊下を曲がってすぐに、後ろから女性の怒鳴り声と重なるように破裂音がまた鳴り始めた。
子供とかにはトラウマもんだよなホント。
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