馬車のち城

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―――――― 「いかん、何もしてねぇぞ俺」 ついモタモタしてる間にミーシャが普通に俺を置いてった。 だが迷うことはない。ビスケットの欠片を落とす宜しく、道標となる無惨な犬っころがいるから道を間違うことはない。 だがやはり何もしてないことに変わりはない。 いけない、実にいけないな。 ブンッ!! 「ヴォッ!?」 後ろから追ってきた犬を木刀で殴り倒し、やはり無意識に手加減をしている。 自分の踏ん切りの無さを情けなく思う。この武器を選んだのだって好きだったからじゃない、殺さなくて済むと思ったからだ。 「意気地ねぇなぁ……」 結局怖がってるのか…… そんな思考をしているその時だった。 ドゴォン!!と雷でも落ちたかのような衝撃音が廊下中に鳴り響く。 「っ!?……なんだ今のお……わぉ」 音のした方へ急いで向かい俺は見付けた。 ゆったりとした姿勢で目的地らしき扉の前に佇むミーシャ。その扉には魔法陣とはまた違う異様な雰囲気を持つ陣が描かれていた。 そしてミーシャの腕の位置のローブ上には燃えてるかのように真っ赤な魔力が渦巻いており、それがローブの先に吸い込まれるように消えていく。 次の瞬間、百烈拳の如く有り得ない速さで扉を殴り始める。その拳には燃えるような真っ赤な魔力が纏われていた。 「……………………」 無言で繰り出される拳はその一発一発が大型のガトリングガンと同レベルに思える迫力と威力でありなんと言うかねぇ、話し掛けにくい。 火花を散らし殴り続けても扉が傷つくことはない。 あれは硬いとかって話じゃないな。マスターが俺にしたのと同系統のものかもしれん。 「ミーシャさーん、バトンタッチしましょうや」 ミーシャが俺の声に気付き最後に一発扉を思いっきり殴り、すたすたと俺の前まできて尋ねてくる。 「翔にどうにか出来るの?」 何か苛々してるようにも聞こえるな。 「多分やれると思う」 「……それじゃあお願い」 「りょーかい」 扉の前までいき木刀をしっかりと握る。 ドリームさんを使えない今、これしかない 目を閉じ、意識を集中させ、木刀に魔力を流し込めるイメージをする。 胸から腕、手へと力が流れていき、スッと魔力が身体とは別の物に移っていくのが分かる。 これはいける……多分だけど
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