馬車のち城

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「ハッハァ、どうしたよその程度か!!」 「ち、く、しょう、がぁ……っっっ!!」 二分ほど過ぎた辺りから戦いはクラウドの防戦一方となっていた。 明らかに手加減されているとは分かっていても、その手加減された槍の突きの速度にさえ着いていけない。 夢剣の力が無ければ防ぐことも儘ならぬなか次第に槍の速さが増していき、甲冑を貫き左肩、右腕、脇腹に痛みが走る。 「くっ……?がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」 それは浅い傷程度のはずが、肉を抉られたかのような激痛がクラウドを襲い膝をつく。 「あぁ、いけねぇ。これには少々俺様特別の呪術を施してあったんだっけなぁ。昔、愛用してた武器があったんだがそれよりも強力なもんにしてあっからなぁ…痛ぇか?」 ニタニタと笑う魔族の顔も今のクラウドには視界が掠れて上手く見れない。 (俺は…何も……守れないのか……) 「ふぅ、幾ら武器が強かろうが使い手がこれじゃあなぁ。お前の後ろに転がってる奴が使った方がまだ楽しめたぜ」 やれやれと肩を踈めながらため息を吐き、クラウドを見下す。 「……俺…は……まだ……」 必死に立ち上がろうとするも身体はいうことを聞いてはくれない。クラウドに出来るのは遠退く意識を保とうとすることだけ。 「時間稼ごうが意味はねぇぜ。外に二人ほど此処に入ろうとしてる奴がいるが生憎呪術結界があるから入れやしねぇんだよ」 「なっ…………」 クラウドの希望は最早潰えていた。 (自分の考えなんて…全て読まれていた……その上で…遊ばれてたのか……) クラウドは後ろを向き、消え入るような声ですみませんと言い目を閉じた。 それは伏している両親とガルシアに言ったのか、国民に対してか。 魔族は槍を振り上げる。 「後で全員地獄に送ってやるから安心しな。惨めなお坊っちゃまよ!」 槍がクラウドの脳天目掛けて突き刺さろうとしたその瞬間、神はクラウドを見捨てなかった。 耳を劈かんばかりの爆発。 「ああああぁぁぁぁ!!」 一人の馬鹿が強烈な破壊音とともにその場に乱入した。
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