馬車のち城

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―――――― 「いたた……」 煙が上がるなか頭を上げて惨状をみて成る程、扉はもう木屑だった。 これは許されるんだろうか、駄目なら破産の一歩を辿り始めるな。 「やべぇ……ん?」 ふと視線を感じ前を見ると背中から真っ黒な翼を生やし、黒い槍を誰かに突き刺そうとしてる奴が一人。 「テメェは誰だ?」 それが鋭い眼光で俺を睨み付けてくる。うわっ、目が3つあるぞ、飛影かっての。……あれ?あの姿どっかで見たような気が…… 「そっちこそどちらさんすか?」 兎も角、まず先に名乗るのが礼儀だろ。 「ふん、あれを破壊する奴がいるとはな……まあいい、面白れぇじゃねぇか」 「何をぶつくさと」 「ハッ、俺様は敵だ。それで充分だろ」 単純明快なことで。 「そして俺様の目の前にいるのは王子様ときた、テメェはどうするよ?」 何をニタニタと薄気味悪く笑って……え?っていうことは今殺されかけてたの王子様?ちょっ、気付かなかった。 「……うん、殺らせはしない!!」 今にも突き刺そうとする奴に一気に近付く。 どうにかして奴の行動を止めて王子様を助けださなければ。 「いい速さじゃねぇか!!」 王子様に向けていた槍を振り上げ突進してきた。嬉々と笑い向かってくる奴の速さはマスターと比べて遜色ないものだった。 そしてぶつかり合う槍と木刀。 「おらぁっ!!」 「くっ……」 鍔迫り合いのなか、洞爺湖に違和感を感じ距離をとる。 そして調べると洞爺湖に亀裂が、しかも何時折れても仕方ないと言えるほどだった。 大方さっきの扉破壊のときに無茶をさせ過ぎたからだろう。 これは次で最後だな……やるしかない。 「そんな棒切れなんぞ捨てて本気でこいや。その程度じゃねぇだろ、もっと俺様を楽しませろ」 挑発が当たり前とか生粋の戦闘狂だなこいつは。 「それじゃあ見せよう。究極の必殺技を」 「ほぉ……俺様の期待を裏切るなよ」 俺の中二染みた言い回しに興味を持ったのか奴は不敵に舌舐りをした。 だが先に心のなかで謝っておこう。 究極とか嘘だから。ある意味で絶望しろ。
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