馬車のち城

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当初の予定より予想外の威力ではあったが、一時的に行動不能にはなってくれたようだ。 横目で助けるべき人数を確認する。 一人、二人……四人か。 奴との距離は充分、そして近くにいた王子様の下へ向かおうとしたが肩を掴まれ振り返るとミーシャがいた。 「何があったの?魔族はどこにいるの?」 「まぞく?というか、遅かったね」 「翔があんな派手にやるから魔犬が集まっちゃったせいだから。それより何処にいるの?」 「あそこっす」 多分あれのことだろうと指差した瞬間、ミーシャが奴のところにまで瞬時に移動し顔面へと犬どもを絶命へと追いやった蹴りをかました。 俺の太ももパァーンが響いていたのか微妙に動くだけで避けきれずに奴は壁に激突する。 「翔!!」 「は、はいっ!?」 俺の方を向きミーシャは言う。 「あたしがこいつの相手をするからその間に王様たちを!!」 それはつまり囮になると、ふむふむ……いやいやいや。 「二人で戦った方が早いと「いいからっ!!」イエッサー!!」 凄く怒られた。 急いで王子様を肩に担ぐ。気を失っているのか反応はなく、手から弱々しい光を放つ剣らしきものを落としたが無視。 次に副騎士団長を王子様の上に、王様、王妃様を左肩に乗せる。 四人を乗せたがそこまで重くなく俺は動けそうだが果たして大丈夫だろうか。 全員ぐったりしていて、特に王様と王妃様の顔色が悪い、血の気が無さすぎる。 生きてはいるが治癒系の魔法を使える人のところへ急いだ方が良いかもしれん。 「ミーシャ、王様たちを安全な所に連れてったらすぐ戻るから」 「うん、待ってる」 こちらを見ずにミーシャは言う。 彼女が見てるのは奴のみ。 その奴の起き上がる姿でやっとのことで思い出す俺は自分のどうしようもなさが情けなくて。 これじゃあ何のために過去を見させてもらったかわかりゃしない。 だが俺に出来るのはいち早くこの場に戻ることのみ。 「無理はしないように、店長さんに会わせる顔がなくなるから……すぐ戻る!!」 一気に廊下まで駆け出す。 後ろから響き渡る金属音。目の前には嫌になるほどの犬ども。 「わんわんおが、こっちは急いでんだ…よっ!!」 近くの犬を蹴り上げたと同時に飛び掛かってくる犬どもに俺は突っ込んでいった。
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