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――――――
「あぁ…効いたぜおい」
翔が去った直後、魔族が立ち上がり首を鳴らしながらミーシャを睨み付ける。
「まあなんだ、取り敢えず……死ねやぁっ!!」
背中の翼で飛び上がり、急降下しながらミーシャに向かう。
空中からの高速突進、だがミーシャは軽く後方に飛び簡単に避ける。
的を失った槍は深く床へと突き刺さり亀裂を走らせる。
「そんな単調な攻撃なんて一生かかっても当たらないよ」
呆れたように言うミーシャに魔族の苛立ちは増していく。
「いい気になんじゃねぇぞ人間がぁ……」
「残念、少し違うから」
そう言いミーシャはフードを脱ぐ。
「あたしのこと覚えてる?」
「あぁ?…獣人族か。だが知らねぇなテメェなんて」
「そっか…………」
その答えに少し目を閉じる。
別に覚えているいないはどうでもよかった。意外にも対峙しても話をしても震えは起きず、在るのはただ殺意のみ。
だからミーシャは言う。
「でもあたしは知ってる。あたしはこの時を…ずっと待っていた。だから今…………お前を殺す」
漏れだす殺気、収まらぬ魔力。
見るものを震え上がらせる程の眼力を受けて尚、魔族はうっすらと口角を上げる。
「……いいじゃねぇか。来いよ、逆にぶっ殺してやるぜぇっ!?」
「もう喋らないで、虫酸が走るから」
魔族が回転し跳ねながら床を転がっていく。
魔族が喋り終える直前に、ミーシャは魔力を爆発させ瞬発力を増し、最速の蹴りを顔面に炸裂させていた。
「これじゃあ駄目……」
だが火力が足りない。現に魔族は既に立ち上がり狂ったように笑っていた。
「カハッ……ク、クハハハハハハハハハハハハハッ、効かねぇなぁ、効かねぇぜ。しかしだ…………調子に乗ってんなよこの獣がぁっ!!」
怒りに身を任せた烈火の如き突きがミーシャに襲い掛かる。
だがそれもローブを掠るだけでまともに当たらない。
「遅い」
最小限の動きで槍を躱し、一瞬の隙に魔族の腹に膝蹴りを放つ。
「当たるかよぉっ!!」
だがそれを読んでいたのか、手を翻し長柄で蹴りを防ぐ。
ジリジリと互いに譲らぬ拮抗状態に同時に二人は距離を置く。
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