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―――――――
「壊れたか、呆気ねぇ」
魔族の前には床に膝をつき腕をだらんと垂らしているミーシャがいた。その瞳からは涙が流れ口からは涎を垂らしている。
目は焦点が合っていなく何処を向いてるとも分からぬ状態であった。
「あ……ああ……あ……あっ…ああ……」
「まあ…ありったけの力を込めたもんだ、獣人ごときに堪えられるわきゃあねぇな」
魔族の術はミーシャの推測通り幻覚であった。ただそれは異質なまでに強力だった。
痛みはリアルを遥かに越え、相手が壊れるまで永遠と精神攻撃が続く無限地獄。
ボロボロに壊れた獣人。
その光景を呆気ないと言いながらも魔族は満足そうに笑い槍を構える。
「体術だけで俺様に勝とうなんて一万年早いんだよ…って聞こえるわけねぇよなっ!!」
無防備な体へと力任せの蹴りが放たれ、ミーシャが宙を飛ぶ。
鈍く響く嫌な音とともに大きくバウンドしながら入り口手前まで転がるが、ミーシャは小刻みに痙攣するだけで起きはしない。
「あ……ああ……あぁ……うあぁ……ぁ……」
呻くミーシャに魔族はゆっくりと近付いていく。
「あの人間が戻ってくる前にテメェは殺しとかねぇとなぁ」
「……ぁ…ぁ…か……け……る……」
「かける?……ああ、あの人間のことか。しかしまだ壊れきってないとはな、しぶとい獣だ」
「……か……け……る……」
まるで呪文のように名を呼ぶミーシャを見て魔族は立ち止まり呟く。
「壊れてねぇってことは幻術は続いてるはずだが……」
少しの思考をするも面倒くせぇと頭を掻きまた歩き始める。
「どうせ死ぬんだ、考えるだけ無駄だ。おい獣、助けなんて来ねぇよ。だから死ね」
無情にも降り下ろされる槍―――だがその一撃はミーシャに届くことはなかった。
風の如く現れた少年。
ミーシャと魔族の真ん中で槍を潰さんとばかりに握り締め少年は言う。
「……女の子に…俺の恩人の一人に何してんだよ」
「テメェ、いつの間に!?」
「口悪いってじいちゃんに怒られるけど……」
「クソがっ、離しやがれ!!」
振り解こうと力を込めるが槍はビクとも動かない。その間にも槍を受け止めていない少年の空いた拳が真っ赤に燃える。
「離せっつってんだろ!!」
魔族が少年の横っ腹を何度も蹴るが少年も槍も動かない。
拳は光を増していく。
「クソが!!」
「煩い、取り敢えず…………死んで詫びろくそ野郎がぁぁぁぁっ!!」
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