馬車のち城

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槍を掴んだまま翔は一歩踏み込み後ろに大きく身体を捻る。そして何の躊躇いもなく魔族の顎を殴り上げる。 「ゴフゥッ!?」 殴られたヵ所が小爆発を起こし、魔族の体が重力に逆らい上へと向かおうとするがそれを翔は許さない。 「まだ…だぁっ!!」 空中に飛ばされる前に槍を引っ張り床へと魔族を強引に叩きつける。 「ガァッ!?」 そして槍を手放し、休む間もなく翔は自分の腰辺りまで跳ねた魔族を強化を施していない足で力一杯蹴り上げる。 「グホォッ!?」 ただの型も何もない出鱈目な蹴り、だがその蹴りは常人の魔力強化された一撃の遥か上をいく蹴り。 空中五メートルほどまで小石の様に打ち上げられ、ぼやける眼で魔族が見たのは下で待ち構えている翔の姿。 そして目がいかざるを得ない赤と金の魔力が渦巻く部位、その拳の輝きは紅炎のような色からから山吹色へと変わっていき、より瞬き室内を照らす。 「これで……」 真っ逆さまに落ちてくる魔族を見据え、スッと右足を一歩引き構える。 その魔力の密度に走る悪寒に、魔族は何とか避けようと体に命令するが顎への一撃が響いてか全くいうことを聞かない。 「クソがぁ……」 落ちてくる魔族と翔の目線が平行になった瞬間、足がめり込まんばかりに床を叩く。 「ラストォォォォッ――――――!!」 吸い込まれるように魔族の腹へと撃ち込まれようとする拳。 「させるか……畜生がっ!!」 瞬時に自分の周囲に結界を発動させる魔族。 だが閃光と化した拳は魔族の必死の抵抗となる結界術をいとも容易く砕き、腹部へクリティカルヒットする。 抑えきれず溢れだす魔力の奔流とともに翔は拳を振り抜く。 「っぁ――――――!?」 その衝撃で魔族は弾丸の様に吹き飛びそのまま王座を砕き、後ろの壁へ深く奥へと突き刺さる。 「ガハッァ!?……ァ…………」 「はぁはぁ……思いしったか…この野郎が…………あぁ、怠さがぱない…」
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