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「はぁ…はぁ……魔力の使いすぎか?……きっついな…」
翔は膝に手をつき大きく息をし呼吸を整える。翔は急激な魔力の消費による魔力欠乏に陥っていた。
何とか少し顔をあげ魔族を見るが脱け出す気配は見られなかった。だが倒したかと訊かれれば怪しかった。
「あれじゃ足りないと……いや、それより…ミー……シャ?」
翔はミーシャが幻術に堕ちたとは露知らず、何故ミーシャが虚ろな眼をし泣いているのか分からなかった。
「え……なあ、ミーシャ…ミーシャ!?」
直ぐに異常だと理解した。急いで駆け寄り肩を揺らすが反応はない。ただ何かに怯える様に呻くだけだった。
「……あ……あぁ…か…け……る……」
「っ!?ミーシャ大丈夫!?どうしたんだよ、何があった!?」
「あ……ああ……ぁ…ぁ……」
「ミーシャ!!ミーシャ!!なあミーシャ!!」
「あぁ…………ぁ………………」
幾ら呼んでも翔の名は返ってこない。そして段々と言葉も発しなくなり震えるだけになっていく。
そのタイミングを見計らったかのように翔の背後から石の崩れ落ちる音。
「ッハ……ハ、ハ、クハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ」
少し蹌踉けながらも魔族は背凭れ部分が砕け散っている王座の前まで歩き、落ちていた槍を拾い狂ったように笑う。その声に振り向き翔は怒りを露にしながら問う。
「…何が可笑しい」
「その獣はなぁ、もう壊れてんだよ!!テメェが幾ら呼ぼうとも目覚めやしねぇっ!!俺様に楯突く奴は嘆き、絶望し、苦しみながら死んでいく定めなんだよっ!!」
叫ぶと同時に魔族の衣服が敗れ胸板から腹以外の部分が黒い毛で覆われ、肌が青白く変色し、瞳の色が全て金へと変化していく。
「第2形態ってか……獣はどう見てもお前だろ」
「黙れ人間!!そいつは俺様の幻術に敗けたんだよ!!調子に乗ったカスの末路がそれだ!!テメェも直ぐにぶっ壊してやる!!」
怒り狂う魔族を見ながら翔は血が出んばかりに拳を握り締める。沸々と煮え滾る思いを隠せないでいた。
「紛れもない屑だよ、お前……」
立ち上がる前にミーシャの肩に手を回し軽く起き上がらせ、翔は首に掛けてあった御守りを取りミーシャの首に掛ける。
「お守り置いてくからちょっとタイムな…あいつをぶん殴って倒したら……すぐ戻るから」
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