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――――――
「クハハッ鏖戦ってやつの始まりだ、死ねやおらぁ!!」
「お前がなぁっ!!」
互いに接近し単純な力での一撃。ぶつかり合う拳に思わず顔を歪めた。こいつ変化して硬くなってるのか。
そんな俺の表情を見て魔族はニヤリと笑い攻撃の手を速める。
「オラオラオラオラオラオラオラオラッ」
「っ、な、め、ん、じゃ、ね、え、よっ!!」
疾風迅雷。馬鹿みたいな槍の速度に殆ど反射の域ですれすれのところで避けつつ、隙を見計らい腹にまず一発入れる。
だが硬い。
「あ?なんだ一体、効かねぇなぁ。殴るってのはこうやるんだよっ!!」
「がっ!?」
カウンターで腹を殴り返される。でもつい痛そうに唸っちゃったけどあまり痛くないっていう。
「クハハッ、おいどうし…ブフッ!?……テメェ」
踞る素振りをしそのまま騙された魔族の顔面をぶん殴る。だが先程までのようにふっ飛びはせず一二歩下がるだけ。
これはもう魔力を惜しんでいる暇はない。
そう思いなけなしの魔力を手に巡らせ始めたその時、魔族が王座まで距離を取りとても……とても嫌な表情を見せた。
「さて人間、テメェはその後ろの獣と自分、どっちを取るだろうなぁ」
「は?どういう意味だ」
「テメェの目で確かめなっ!!」
魔族が大きく翼を拡げると後ろに転がる瓦礫が消えていき、壁も消えてなって……いや、見えなくなっていった。
現れた底の見えない闇は魔族を中心に這うように空間を侵食していく。
それが左右の壁まで到り、魔族が自身の武器を闇の中へと投擲した。
「さあ、絶望しろ」
パチンと指を鳴らすと投げ入れられたはずの槍が闇から顔を出す、魔族の頭上より展開されるその数はおよそ数十。
「何処の英雄王だ……」
度外の光景に笑うしかなかった。
壁際の槍の切っ先は俺の真後ろ、つまりミーシャに向いている。
一本でも避けたり打ち落とせなければ……その結果を想像するのは容易だった。
「さて、獣を見殺しにして逃げるなら今のうちだぞ、人間」
「誰が逃げるか…っと……危ないぞこのやろう」
不意に視界の端の槍が放たれるがその速度は遅く、容易に掴めた。
「逃げねぇテメェに敬意を評して武器をやろう、ありがたく思え」
ああ、俺の魔武器壊れたと思ってんのか。しかし、どうにも信用できないが…使わざるを得ないか。
「さあ!!何時まで足掻く、人間!!」
「お前をぶん殴るまでは…足掻いてやるさ」
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