馬車のち城

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ここで二回目の力を使えば戦い終える前に眠りに落ちる気がした、だから迷っている場合ではない。 槍を片手に角度的に俺をすり抜けミーシャに攻撃が行かぬ位置まで下がる。 その時、ミーシャを確認したが胸元が淡く光っていたように見えた。何かの徴候かもしれない、だが気にする暇はない。 横目でミーシャを見た瞬間放たれた槍を上へと弾き、それが廊下の壁に突き刺さり泡沫の如く消えていく。 そしてまた一本、一本と俺に向かう槍は数を増やしていく。一動作毎にその姿勢の不意を突くように死角から迫る槍を弾き、軌道を変えていく。 「おらぁぁぁぁぁぁっ!!」 弾く、弾く、弾く、弾く、弾く、弾く、弾く、弾く、弾く、弾く、弾く、弾く、弾く、弾く――――――― ただ無心に槍を振るい弾き飛ばし、強化した片腕で弾く度に火花が飛び散るのも気にせず動かし続けた。 「クハハッ、まだまだ終わりは来ねぇぞ!!」 一方が力尽きるまで終わることはない、そして限界が近付いてきてるのはどうやら俺の方で。 「っのやろ!!」 無理を承知で飛来する槍の長柄を掴む。速さに堪えられず手の皮膚が破れていく痛み、零れ落ちる血を我慢し半回転させそのまま魔族に向かって投げる。 「甘ぇよ」 だが呆気なく相殺される。二本の槍はカタンと床に落ち消えていく。 「もう終わりか?」 魔族の勝ち誇った笑み。このまま負けるぐらいなら一か八かで必中必殺クラスの武器を召喚するべきじゃないか。 だが迷って毎回躊躇って行動するのがワンテンポ遅れる、それが俺というわけで。 「いっ!?」 急に槍を持つ腕に針を刺されたような鋭い痛みが走る。 それに気を取られた一瞬のうちに頬を掠り後ろへと飛び去ろうとする槍をもう片方の腕で何とか弾く。 だが腕の痛みは槍を振るう度に増し、槍を握っている感覚さえ無くなり始めてくる。 「おい、何だ随分と辛そうじゃねぇか」 「こ、の、や、ろ―――らあっ!!」 やっぱり嵌められたんだ。敵に塩を送る、なんて実際にあるわけがなかった。 さっきから放そうと手を開こうとするのに言うことを聞かない。槍が掌に寄生したかのように引っ付き、手の甲から続く黒い痣。 「はっ……おらあぁぁぁっ―――――!!」 自分の馬鹿さに笑いしか出ない。
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