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「い、い、加減に、しやがれぇぇぇぇ!!」
時間が経つごとに痣が拡がっていくのが分かる。
肘から先は麻痺し始め手首も曲がらず、自分の腕では無いみたいだ。
腕が棒になるとはこう言うことか、比喩とかではなく現実だけども。
そして一番最悪な事態になってしまった。
これじゃあ剣が出せない―――――――
「く、そ、がぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
翔の限界は近かった。痣は翔には見えてなかったが二の腕まで至り次第に痛みを伴うものとなっていた。
がむしゃらに振り回すだけで対処できていた攻撃は、左腕の稼働範囲が狭まったために翔を傷つけ始める。
その傷は呪術により単なる掠り傷のはずが激痛へと変わっていく。
多大なる魔力の消耗、止めどなく襲い掛かる槍に磨り減らされる神経、激痛による苦しみ。
力が抜けていき、意識が薄まっていく感覚に翔は呟く。
「ああ……いかんな、こりゃ、もう……」
限界だ―――――
朦朧とする意識のなか三方向から飛んでくる槍をどうにかする気力もなく目を瞑ってしまう。
ごめんと、守れなかったと心の中で翔は謝るしか出来ず。
そんな翔の耳に声が聞こえる。
――――――大丈夫だよ
「なっ!?」
魔族の驚きの声に翔は目を開けると槍はどこにも刺さっておらず、前には後ろで倒れているはずの少女が立っていた。
「ミー…シャ……?」
「ごめんね、翔。あと、お待たせ」
地獄を体験した少女は少年を助けるべく、再び戦いの場へ立つ。
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