5171人が本棚に入れています
本棚に追加
「ミーシャ…え…何で…?」
「ごめん、後で説明するから。それより……」
ミーシャは魔族を見る。その顔は信じられないものを見てるかのように驚愕していた。
「馬鹿な…どうやって俺様の術を解いたっていうんだ……あり得ねぇ、完璧に壊れたはずだろ」
疑問を口にする魔族にミーシャは雰囲気を一変させ冷たい目をし答える。
「お前には一生分からないよ。それより……攻撃、止めてていいの?」
「なっ!?」
魔族が気が動転したためにその意思で放っていた攻撃は止んでおり、ミーシャは一足飛びで魔族の前まで移動する。
「――――ふっ」
そして顎を空中で回転しながら蹴り上げる。
声もなく魔族が宙に浮かぶ。それと同時に背後の闇と展開されていた数十の槍が姿を消す。
無論、翔の手にあった槍も陽炎の如く消えていった。
カタンと何処かに槍が落ちる音。
「翔っ!!」
空中で反転した状態でミーシャが球状の物体を投げる。それをキャッチし見れば異様なまでに光るマジックエンペラー(笑)。
(あぁ、食べろと……)
これが持つ効果を翔は前例を見ていたから知っていた。メリットもデメリットも両方。
だがもう迷わなかった。
「…………ンクッ」
人肌に温まっていたそれを一口で頬張り数回噛み飲み込む。
そして瞬時に沸き起こる魔力の奔流。ふらついていた足取りが元に戻り、視界が安定していく。
(凄い……何だこれ……)
翔は昂り始める意識に抑えが効かなくなっていく。
「クソがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
空中で叫ぶ魔族を見て、翔はただ思うがままに駆け出す。
怒りに身を任せ魔族へと跳躍し千切れんばかりに右腕を振るう。
「死ねやぁっ!!」
「テメ――グフッ!?」
ミーシャしか眼中になかった魔族は不意に殴られ五メートルの高さから床へと激突する。
「ふう……やっと殴れた」
翔が着地し汗を拭っているとミーシャが後ろから声を掛ける。
「スキッリした?」
「……いや」
「そっか。あたしも全然なんだ……まだ動けるよね」
「一応は余裕と言っておく」
「ふふっ、それじゃあこれで終わりにするよ。一気に畳み掛けるよ。行くよ、翔」
「おうよ!!」
ゆらりと立ち上がる魔族に向かい、二人は同時に駆け出す――――
最初のコメントを投稿しよう!