馬車のち城

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体が嘘みたいに軽い。先陣を切るために俺は持ち前の脚力で一歩前へと出る。 左腕はまだ完全に動かず使えそうにない。右を使うしかないか。 魔族が地を蹴る、それに合わせ腕を振りかぶるがそれは空を切った。 「まずはテメエだっ!!」 俺の横をすり抜け魔族はミーシャに狙いを定めていた。 「ミーシャ!!」 振り返り叫ぶ。 だがミーシャはそれを読んでいたのか慌てることなく立ち止まり静かに構える。 自分に向かう拳に合わせるように半歩下がる。拳の軌道を見極めて体をずらし、殴りかかる魔族の拳はミーシャの掌に触れあっけなく横にそらされる。 次の瞬間、ミーシャは後ろに下げていた重心を一気に前に移行し、体制の崩れた魔族へと空を裂くほどの肘打ちを喉笛へと放つ。 「ゴフッ!!?」 遠心力により後頭部から勢いよく床に激突する魔族。 それをただポカンと見ていることしかできない俺、情けね。 追撃とばかりにミーシャは拳を振り下ろすが魔族は横に転がりそれを避ける。 立ち上がり距離を置こうとする魔族へ俺は突進する。視界の端からの攻撃だったが俺の拳はいとも簡単に魔族に止められた。 「舐めてんのかテメエ……」 そこで気づいた……魔力強化をしてないや俺。 軽視されたとでも思ったのか怒りの表情で魔族はあいている腕を振りかぶる。だがそれは間違いだった。 「……ガハッ!?」 鳴り響く轟音と同時に押さえられていた拳が自由になる。 俺が見ることができたのはミーシャが魔族の腹に膝蹴りを放ったところだった。 マンガみたいに魔族の背から衝撃波みたいなものが現在進行形で出ているが錯覚……ではないな。 ふらつきながら魔族が後退していく。 よくこういう時に敵ってのは何か語りだすことがあるがそんな間は与えない。 忘れずに今度は魔力を込め走り出す。 「もう一発!!」 魔族の前まで移動し拳を振りかぶる。右の頬へと向かう俺とは別に左の頬へも拳。 それがミーシャのものだとすぐに察しそのまま振り抜く。 「「ハァッ!!」」 寸分の狂いもなく俺とミーシャの拳は同時に魔族を殴り飛ばした。
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