馬車のち城

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仰向けになり呻く魔族に俺は呟く。 「呆気なくないか……?」 全力で殴った、手応えも最高にあった、倒せたとしても不思議ではない、だがどうにも腑に落ちない。そんな俺にミーシャが言う。 「力の限界だと思う……多分あれのせいだよ」 ミーシャが指差したのは魔族の使っていた槍。 「今確信した。あれは持ち主の力を吸収することで能力を発揮している。それもかなりの量を」 「……つまり?」 「呪術以外に力を使っていると知らなければ、過度の消耗によってすぐに使い手にガタがくるってことだよ」 「いや、自分の武器の力を知らないなんて……」 ないでしょ、そう言おうとしたとき魔族が動く。すぐに警戒を強め構えていると魔族はゆったりと立ち上がり俺たちを睨んだ。 「ふざけんじゃねえ…俺様が力を吸われてることぐらい理解してねえわけがあるか……」 そう言う魔族の瞳には力がなかった。知っていたのに何故…理由はわからない、だが限界が近いことは見ればわかった。 ミーシャが一歩進む。 「翔、あたしに任せて……これで最期……やっと殺せる、やっと……」 ミーシャが何処からか短剣を取り出す。何の装飾もされていない普通の短剣だった。ただ1つ、刀身が紅く染まっている以外は。 一歩ずつ魔族へと向かうミーシャ、しかしあと五メートルほどのところで突然ミーシャの動きが止まった。 「な……体…が……?」 魔族がミーシャに掌を向けながら息切れ切れに言う。 「テメエごとき…止める力ぐらいなあ…残ってるんだよ…ありえねえ屈辱だが…ここは引くとするぜ、次は必ず殺す」 魔族の足元に沼のようなものが生まれ、そこに沈み始める。 「ま……て……」 ミーシャが手を伸ばすが届くはずもない。だが逃がす訳にはいかない。俺は使命として、何よりここであいつを逃がせばミーシャはこれからも苦しんでしまう。 もう迷わない、ぶっ倒れるの上等だ!! 痛む左腕を胸元へと持っていき剣を呼び出す。 数本の光り輝く剣が頭上に現れ、それを沈んでいく魔族めがけて思いっきり腕を振るい投射する。 「逃がすかあっ!!光の、護封剣っ!!」 突如現れた光の剣に魔族が驚愕の表情を浮かべるがもう遅い。 剣は魔族の両肩を貫き、勢いのまま穴から引きずり出し壁へと打ち付ける。そして残りの剣も四肢を貫き魔族を磔にした。 「くそがっ……なんだこれは!?」 「お前はこれから3ターンの間、攻撃不能だ」
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