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「話とは何ですか?」
先の会話を聞いていない翔にとって仙道は善か悪かの判断ができるわけがなく、あくまで目上の者に対する敬意を示すがミーシャがそれを諌める。
「翔、あれに気を許しちゃいけない」
魔族を見ていた時と同じ、憎悪の念の籠るミーシャの目に仙道は悲しそうに笑い、翔がそれを擁護する。
「酷いねぇ、僕が何をしたっていうのだい?」
「そうだぞミーシャ、そんな藪から棒に…」
聞き逃していたから仕方ない、しかし翔を心配してのことなのにとミーシャは無性に苛立ちその声に怒気を帯びる。
「翔はちょっと黙って」
「イエス、マム」
すぐに一歩下がり謝る翔がふざけているかどうかは定かではないがその様子を見ながら仙道は話し出す。
「君は僕から数えて三人目の後任だが……どうやらあれはやり方を変えてきたようだね」
「後任…だって…?」
「そう、君が三人目だ」
初めて会った男の後任とは何だと翔が疑問に思う中、仙道は続ける。
「君はきっと……あれに悪い奴を倒すなんていう響きが良く、簡単で、それでいて曖昧な頼まれ方でもしたんだろう」
悪い奴を倒す、その言葉に思い当たる節は一つしかなく翔は後任の意味を理解する。
「後任って……まさか…」
「察しがいいね。その通り、神の代理人、使いとでも言うらしいが、とにかく僕は君の先輩といったところだ」
(こんなところで地球の人間に会うなんて……)
仙道を見ながら翔はただ驚いていたがミーシャは違った。
「翔の前の二人はどうなったの……」
「ふふっ、いやいや君は鋭いところを突くね。まあ――――――
死んだよ」
「なっ……!?」
前任者の死という凶報に驚く翔だが、平然とした様でミーシャは続ける。
「……聞き方を変える。お前が殺したのか?」
ミーシャの雰囲気が一変し辺りが静まり返り、次第にくっくと笑い声が響き始める。
「君は本当に鋭すぎるね……ああそうさ、僕が殺したよ」
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