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「え?…殺…した?…うおっ!?」
その瞬間、ミーシャが翔を抱え出口へと一直線に向かう。しかし見えない何かに弾かれてしまうが、猫を彷彿させる動きで華麗に着地した。
「ちょ、ミーシャ!?」
「くっ…何をした!!」
「何って…結界を張ってあるだけさ」
当たり前のように言う仙道を見向きはせず、翔を担いだままミーシャは壁の端まで飛び退き翔を降ろす。
「ゲホッ、ゲホッ、どうしたのさ!?」
「駄目…あいつは危険すぎる。このままじゃ翔が……どうにかして逃げる手段を考えるから……」
珍しく極度に焦った表情をするミーシャに翔は待ったをかける。
「いや、今逃げたら魔族が……それにさっきの発言も冗談かも……」
「違う…あれは人を殺したもののする目…あたしと同じ……人殺しの……」
(人殺し?……隠密とはマスターが言ってたけど……ミーシャが?人殺し?いやそれより……)
さまざまな疑問が浮かぶが疲れ果てた頭で思考が纏まらず、そのすべてを放棄して翔は言う。
「いや、でもここで逃げたら魔族は……」
「魔族なんていいから…ちょっと待って……」
何も行動することなく翔たちを眺める仙道を警戒しながらミーシャは考える。
(どうすれば…逃げ道なんて他に……)
「でもこのままじゃ……ミーシャ」
必死に頭を回転させているミーシャの肩に手を置くと、その手は勢いよく弾かれ翔はよろける。
「あたしは大丈夫だから……ちょっと…待ってよ……」
「でも」
「あたしはっ!!」
俯いていたミーシャが勢いよく翔の胸倉を掴む。その顔はとても苦しそうで、悲痛な表情だった。
「あたしはっ―――――あたしは友達を……私の過去を知って、受け入れて…一緒に戦ってくれると言った友達を……新しくできた家族を犠牲にしてまで復讐するつもりなんてないっ!!」
出会ってから初めて泣きそうなほど叫ぶ少女に翔は何も言えなくなった。
「ミーシャ……」
「んー、話は終わったかな?そんなに離れられると困るんだけどね」
それまで傍観していた仙道が本当に困ったような顔をしながら翔たちに一歩ずつ近づいていく。
「なんで…なんで私の…………あああああああああああっ!!」
突然に狂ったように叫び、ミーシャは仙道に突進するが片腕でボールのように弾き飛ばされ、結界に激突しそのまま気を失った。
「ミーシャ!!」
「まったく…まあこれでゆっくり話ができると思えばいいか」
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