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――――――
「くそっ、なんだこれはっ!!」
場所は王室入り口前、結界により足止めを食らっている副騎士団長ガルシアと数人の騎士。
「副団長、これ以上はお体に障ります。一旦退かれては……」
一人の騎士がガルシアを落ちつけようと話しかけるがそれは火に油を注ぐ行為となった。
「馬鹿を言うなっ、ギルドの者たちが王を、王妃を、王子を、そして不甲斐なく負けた私をも助け出し、今も尚この中で魔族と戦っているのだぞ!!そんなことを言っている暇があったらこれを抉じ開ける方法でも考えろ!!」
結界のせいで中の状況も何もわからず、ガルシアは自分の無力さを棚に上げ、八つ当たりしていることは分かっていた。そしてそんなことをする自分に余計に腹が立った。
「くそっ!!」
殴ったところでびくともしない結界。そんなガルシアに後ろから声が掛けられる。
「クダンの言う通りだ、落ち着け」
その声の主は街に出ていたジグルだった。
「だ、団長!?街のほうは片が付いたのですか!?」
「うむ、一応な。ただ奇妙なことに死者が今のところ一人も出ていない。喜ばしいことだがどうにも、な……」
この規模で死者がゼロ。そして兵の数人が自分が魔犬の存在を感知したと同時に街に出撃していた事。殺されかけた民の前に現れ、救い助けた、四の黒き翼をもった存在。どうにも、この襲撃は奇妙すぎた。
「……考えても仕方ないな。ガルシア、プリシスから簡単に話は聞いた」
「…申し訳ありません。私は、護ることができませんでした……」
「気にするな…とは言わんがその話は後だ。ここに少年たちがいるのだな?」
「は、はい」
「では、壊すしかないのぉ」
そう言うとジグルはその年に似合わぬ逞しい腕を振りかぶる。
「だ、団長!?」
「いつも言っておるだろう、行動せねば何も始まらぬと。まだまだ、儂もこれぐらいの結界ごとき……む?……なんじゃ、その必要はないようだ」
視線の先では結界が薄まっていき、中の様子がうっすらと見えてきた。そのタイミングでジグルはその剛腕を結界に叩き付ける。
轟音の後、パキッと結界が音を立てさらさらと砂のように細かい粒子となり消えていった。
その先では何事かと、驚いた顔で抱き合っている少年少女。二人の無事を確認し、ジグルはカッカと笑いながら声をかける。
「二人ともどうにか大丈夫そうだな、それとも儂たちは邪魔だったかな?」
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