馬車のち城

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―――――― どう言えばいいだろう、団長さんとガルシアさん、そのほか数人の騎士の方々にみられる中、抱き合っている俺とミーシャ……これはあかん。 俺たちは互いに無言ですぐさま離れ立ち上がった。 「ほっほ、元気そうじゃな、安心したぞ」 嬉しそうに笑う団長さんに何も言えなくなる俺たち。いかん、恥ずかしい。 その横からガルシアさんがどこか申し訳なさそうに話しかけてくる。 「お前たちがいなければ私は……いや、なんでもない」 そんなガルシアさんを一瞥し、団長さんがミーシャの方を向く。 「ところで、この状況で聞くのもなんじゃがミスト、お主の本当の名はなんなのだ?」 不意に聞いてきた団長さんにミーシャは隠すことなく静かに答えた。 「ミーシャと言います」 「そうか……なに、弟がお主を心配していたのでな。吹っ切れたとまでは言えぬ様だが名を明かしたということは、大丈夫そうじゃの」 優しく笑う団長さんにミーシャは少しポカンとした後、同じように優しく微笑んだ。 「ばれてたんだ……ありがとうございます。全部が終わったらあたし自身でお礼を言っておきます」 和やかな雰囲気が流れる。だがその雰囲気をガルシアさんがバッサリと断ち切った。 「そんなことよりも魔族はどこに!?」 「まったくお前は……落ち着いて周りをよく見ろ」 呆れたように言う団長さんの指差す方向には、力なく磔にされている魔族。 「あっ……」 「もう終わっておる。そうでなければこんな風に呑気に話すわけが無かろう。そんなことより少年」 急に話しかけられて体がビクンと震えた。え、何だろう? 「あれを磔にしているあの光の剣は少年のものか?」 「え、あ、はい」 「そうか……」 すると頭に大きな手がゆっくりと置かれる。 「よく頑張ったのぉ」 全てを理解したような口ぶりで笑いかけてくれたその表情がどうにもむず痒くて、気恥ずかしくて、懐かしくて、俺は照れたように笑っていた。 「お主もじゃ」 ミーシャを手招きし、もう片方の手を乗せ同時にわしゃわしゃと撫でられた。 だが不快感など微塵もなく、俺たちはされるがままに撫でられた。
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