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「あの、団長、奴に早く止めを刺さなければ」
剣を構え今にも斬りかかろうとするガルシアさんを団長さんが制する。
「待て、あれはもう逃げられない……そうじゃろ、魔族よ」
皆がその言葉に一斉に目を向けた先で小さく笑い声が出始める。
「クハッ、ハハッ、クハハハハハハハハハハハハッ!!気づかれてたとはなぁ」
「薄々な」
「確かに逃げれそうもねぇ、だがな、テメェらごとき下等生物に殺されるぐらいなら俺様の人生、俺様の手で終わらす!!」
魔族は叫び、それに呼応したかのように床に転がっていた槍が魔族の手元にまで吸い寄せられていった。
「ハッ、死ぬなら手を貸すってか。いいぜ、だがなぁこのまま死ぬ気はねぇ、この街の奴らも道ずれにしてやるよ!!ヴェトラ!!」
魔族が叫んだ瞬間、高周波の超音波が室内に鳴り響いた。
「うっ!?」
脳内にまで音波が響く。やばい、これ痛い。
皆が耳を塞ぐ中、魔族だけが狂ったように笑い続ける。
「ハハハハハハハハハハハハハハッ!!俺様のすべてを吸い尽くすか!!おい、獣とガキ!!」
魔族が俺とミーシャに叫ぶ。
「あの野郎に道化にされてたのはぶっ殺してやりてぇ限りだ、そしてテメェらを俺様自身の手で殺せねぇのは残念だがな、こうなったら最後まで俺様のショーに付き合ってもらうぜ!!足掻き苦しみ、絶望しながら死んで逝け!!じゃあな人間ども、先に地獄で待ってるぞ!!クハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ――――――――」
笑い声が消え去るころには槍とともに魔族の姿は何処にもなく、護封剣だけが残っていた。
「なんだって言うんだ…」
こういうのを何フラグって言ったかな……ダメだ、頭が働かん。
「勝手に死んじゃわないでよ……」
「ミーシャ……」
何とも言えない表情で呟くミーシャに声をかけようとしたその時、床が小刻みに揺れ始め、それはどんどんと揺れの度合いを増していった。
「な、何だこれは!?」
各々に動揺が走る中、団長さんだけが冷静なまま言う。
「道ずれ…そういうことか。全員、すぐに外へ向かうぞ!!」
「「「はっ」」」
号令とともに騎士の人たちは一斉に駆け出して行った。
「何をしてる、行くぞ」
「あ、はい、ミーシャ」
「…うん、大丈夫。行こう」
ガルシアさんに急かされ俺たちは激しい揺れのなか城外へと急いだ。
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