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そう団長さんの指差す先には大きさを増している岩……というより最早小規模隕石と化している置き土産。
……あれはきつくないっすかね。
「この街の結界では耐えられないんですか?」
ふと思い出した結界の存在、だが団長とミーシャは苦虫を噛み潰したような顔をする。
「翔、この街の結界は耐魔法用結界だから物理系の衝撃には弱いの……」
「じゃ、じゃああれが落ちてくる前に破壊すれば」
「無理じゃな。この結界は内側からの攻撃でもその効力を発揮する。結界を解く時間もない」
「そ、それじゃ……あっ」
辺りの家から貴族が兵士に先導され老若男女関係なしに大通りを南下し始めており、馬車もいつの間にか姿を消していた。
そして小走りでプリシスさんが走ってくる。
「団長、全兵士、騎士ともに通達完了しました」
「うむ、時間はどれ程かかる」
「最低でも十分は必要かと……」
「そんな時間はない、急がせろ。そして集まり次第、兵士、騎士で使えるものは全方位に防御魔法および結界魔法を展開。念のため国王の馬車には多重結界をかけろ」
「はっ、了解です。しかし団長たちはどうなさるので?」
「みすみすこの街を破壊されるわけにはいかぬからな。なに、儂らなら問題はない。お前も民の移動状況を確認次第早く広場に向かえ」
「はっ、御武運を」
大通りへと走るプリシスさん。だがそのまま走り去るかと思いきや、立ち止まりくるりと反転し俺を指さす。
「戸神翔、くれぐれも団長の足を引っ張らないように」
睨まれながら、しかし初めて会った時とは違う感じがする表情で、それだけ言うと彼女は未だ避難が続く中に走って行った。
「足を引っ張るな、か……」
気になって左手を握って開いてを繰り返してみる。
痺れもないしちゃんと動く、まだ大丈夫だ、眠気もやってこない。
護封剣はまだ刺さったまま場に残ってるということか……そこまで再現されたことに今は感謝だな。
しかしなんというか、意外だった、名前覚えてもらえてたのか。
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