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「それで、今から俺はどうすれば?」
俺の問いに団長さんとミーシャは打ち合わせでもしてたかのように流れるように喋りだす。
「避難までの時間も稼ぎ、尚且つ被害を最小限にするためには」
「結界が破壊されるギリギリまで待ち、破壊された瞬間に迎撃…ですよね」
「うむ、その通りだ」
「……できるんですか?」
空を見上げれば散り散りに見えていた星々が見えなくなるほど大きさを増している。
生半可な力では太刀打ちできるとは思えない。
そんな悲観的な俺に団長さんは同じように空を見上げ、しかし俺とは違う決意の表情を向け
「不可能云々ではない、この身が朽ちようともやらねばならない。ただそれだけのことだ」
「…………」
その言葉のお陰か、疲れきっていた頭の中を妙にすっきりさせた気がした。
逃げ道なんてないんだから腹を括らなきゃいけない、当たり前のことじゃないか。
「さて、とは言ったがどうしたもんかの」
「……へ?」
「いやはや、予想外にでかくなっておるからの。避難の時間は稼げそうじゃが、これは老体には厳しいかもしれんの。ほっほっほ」
「何をいっ……」
打って変わっての楽観思考に一瞬突っ込みそうになったが、団長さんを見てそんな気はすぐに失せた。
表情は笑っているが額からは冷や汗が流れていたのだから。
状況が最悪だろうと、圧倒的不利だろうと、俺たちを不安にさせないよう敢えて笑っているんだ。
ミーシャもそれがわかっているのか黙ってしまっている。
おそらく団長さんもミーシャも火力が足りないんだ。けど、俺ならあと一回は馬鹿ができる。
瀕死というおまけ付きの最高級の馬鹿が。
護るために、立ち向かうために貰った力じゃないか。此処で逃げたら意味がないだろ、戸神翔。
「しかしそうも言っておられぬからの」
笑いながら再び城内へと舞い戻ろうとする団長さんの正面に立ち、俺は言う。
「あれをぶっ壊すのは俺が……俺がやります」
瀕死にならないことを願いながら。しっかし、あれ冗談ならいいのに。
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