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――――――
「おぉ…高いなホントもう……そしてでけぇ……」
威圧感たっぷりで結界越しに見える巨大隕石。例えるなら俺が蟻で奴がバレーボールといったところか。
少しばかりやれるかどうか不安になっていると耳に声が響く。
『文字通り城の頂上だからの。だが、本当に信じていいのだな?』
不安が混じる団長さんの声。そりゃそうだ、こんな子供に命運を託すのは心許無いことだろう。
向かう前に渡された通信機らしきものを口元まで持っていきやる気を伝える。
「こういう力仕事は若者の役目です。さっき言ったぐらいまでは死ぬ気で破壊しますからあとはお願いします…っと、危な」
会話に集中して一瞬足を滑らせかけた。今いるのはホントに頂上、へたすれば死ぬかも。
城のてっぺんにある小部屋の上、三角柱の形をした屋根に片腕を回して何とか掴まっているこの状況。
十数センチの縁に片足を乗せながら上を見れば、ここから十メートルほどの位置に結界がある。
『うむ、了解した。どうやら時間はまだあるようだからの、タイミングは任せるぞ。武運を祈る、あと…落ちるのでないぞ』
「了解です」
一度通信が切れ、四方を見渡せば東西南北の屋根に四つの人影。
南に団長さん、東にミーシャ、西に連絡を受け屋根伝いに駆け抜けてきたガルシアさん、北になぜか兄を追ってきて向かわせられたプリシスさん、以下四名。
そして再度連絡が入る。
『ガルシアだ。団長がお前を信じたのなら、私も何も言うまい。武運を祈る』
そのまま俺が言葉を返す前にプツリと通信が切れる。
ガルシアさん……かっけぇ、俺も言ってみたい。
そしてまたも声が響く。
『聞こえていますか?』
「あ、プリシスさん?」
『大丈夫のようですね。私も兄様と団長が認めたのならば何も言いません。ただ、貴方には言いたいことが山ほどあるので死ぬ気で帰ってくるように。ですから、その……武運を祈ります』
切れる通信、プリシスさんのほうを見ればそっぽを向かれている。
言いたいこととやらは分かるが、いやだなぁ……そう言えばフーや千夜どうなったんだろ?避難出来てんのか?……信じよう。
「……そろそろかね」
完成へと向かう隕石に通信機を切って仕舞おうとするがそれはできなかった。
そういえばまだでしたね。
『切ろうとするの早いよ』
「サーセン」
ミーシャを忘れるわけにもいくまい。
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