馬車のち城

70/71
前へ
/605ページ
次へ
傍目には遥かに小さくなったように見える隕石、しかし小さくなるわけがない。 下で騒いでいた間に何メートル上昇したっていうんだ? 「はぁ、すげぇ…………ん?」 なんだろう?まだでかくなってくのか……いや違う!!落ちてきて――――――― ズドォォォォォォォォォォォォン!! 気づいた時には結界に隕石が衝突していた。まるで花火のように盛大に火花を散らし、鼓膜が破けるほどの轟音が響き渡る。 町全体が激しい揺れに襲われ、必然的に町一番の高い場所にいる俺は――――― 「ぬおおおおおおおおおお!!落ちるぅぅぅぅぅぅ!!」 人生最大の横揺れ。 揺れが収まるまで耐えるべく屋根にしがみ付くが、しかしそんな時間はなかった。 「あっ…」 物理に弱い結界、見れば亀裂が全体に細かく刻まれている。 もうこれは壊れる、けどこれじゃ狙いがうまく定まらない。 「ええい、儘よ!!『氷床』!!」 一辺五十センチ、厚さ二十センチほどの正方形の氷塊を空中に作り飛び乗る。 それと同時に音を立て崩壊していく結界。 着地した瞬間、半回転しつつ氷床を踵からつま先までフル活用し力の限り蹴り飛ばす。 結界が氷の膜程度の障害だったとでもいうように依然とした速度で落ちてくる隕石に四宝剣を深く、深く突き立てる。 「ぶっ壊れろぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」 体から力が失われる感覚に襲われながらも、ありったけの破壊の力を注ぎ込んだ。 瞬間、爆ぜた様に感じたというのが正しいか、自分でもわからないうちに隕石は粉微塵と化していた。 そして遅れてきた爆発音、辺りの大気が震えるほどの衝撃の余波が走る。 だが俺は吹き飛ばされはせず、逆に引き寄せられていた。ただ唯一残った隕石の核に。 体が強制的に核に向かうなか、極小型ブラックホールというのを思い出した。球なのに何処までも続くと錯覚させる闇がそう連想させた。 俺の伸長と同じぐらいの大きさで黒い球体のそれは、強力な引力を発生させていてこのままいけばこの街のすべてを飲み込み消し去る気がした。 すべてが消えてなくなる光景が頭をよぎった。 だから俺は、何も考えることなく腕を伸ばし、それを貫いた――――
/605ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5171人が本棚に入れています
本棚に追加