馬車のち城

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―――――― 秒刻みで激しく移り変わる現状を王女、ソフィア・F・ルイス・アイリスは自身とフレリアに結界をかけ眺めていた。 隕石が結界を破壊し、戸神翔が隕石を一瞬のうちに微塵と化し、そこから現れた黒い球体に体が吸い込まれるような感覚に襲われた次には、翔が奇妙な形をした剣でそれを貫いていた。 そして今、球体は粉々に砕けていき、役目が終えた剣は消え去り、その持ち主であった翔は自由落下を始めていた。 「翔っ!!」 それを見たフレリアは窓から飛び出し翔のパーカーのフードを掴むが…… 「お…も…い……」 妖精一人の力には限度がある。フードだけを持たれ翔のくびは絞められていくがフレリアは気づかない。 そして高度はだんだんと降下していく。 「もう…げんかい……」 「フーちゃん!!」 落ち始める二人にソフィアは約二メートルの距離を窓からジャンプし魔法をかける。 「お願い『泡界晶』!!」 ソフィアの胸元に現れた小さなシャボンのような球体が膨らんでいき三人を包んでいく。 「すごーい!!」 フレリアはシャボンに包まれ感動するがすぐに気付く。 「落ちてる?」 首をかしげるフレリアにソフィアは、あははと苦笑いしながら言う。 「店員オーバーかな」 そして真っ逆さまに落ちていくその下は偶然か、翔が蹴落とした氷塊が屋根を壊しておりそこを音もなくシャボンは通過していった。 「「きゃあっ!?」」 ボヨンと間抜けな音を立て落ちたところは城のロビーだった。そのまま五、六回跳ねてシャボンはパチンと弾けた。 「はぁ…なんとかなった……かな」 「私は楽しかったよー。翔、寝てるなんてもったいないね」 ソフィアがほっと安堵する中、フレリアは翔の頬を引っ張りながら残念そうに言い、違和感を覚える。 「あれ?翔?」 フレリアが何かを確かめようとしたその時、ロビーの入り口が乱暴に開け放たれた。 「王女!!」 「翔っ!!」 入ってきたのはジグルとミーシャであった。 「王女、怪我は……ないようだな」 「はは、なんとかね」 笑みを見せる二人だがミーシャたちは違った。 「ミーシャ、翔なんか変だよ」 「っ!!」 ペシぺシと翔を叩き言うフレリアにミーシャはすぐに駆け寄った。 「どうしたのだ?」 歩み寄ってきた二人にゆっくりと顔を上げたミーシャの顔は今にも泣きそうなもので。 そしてミーシャは震える声で何とか言葉を紡いだ。 「翔…息……してない…………」
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